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第1部 3章 底辺ぼっち VS 御曹司
今後の目標
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「ギルド……」
ギルドとは、パーティーよりも大規模な攻略者の集まりである。
国や企業が発注するダンジョン攻略に関する様々な依頼をこなし、その代わりに報酬を得る。
言ってしまえば古来の傭兵団や、あるいはダンジョン攻略の代行を請け負う会社と呼んでもいい。
ダンジョン攻略で稼げるようになってから、ギルドは爆発的に増大した。
今や大手のギルドに至っては年商で数百億だの数千億だのを叩き出すほどである。
「俺が……ですか?」
「うん、興味とかないの?」
「それは……」
ギルドへの所属は攻略者の一つの目標……夢でもある。
安定した仕事の供給や高い収入が見込めるし、なにより箔(はく)が付く。
どこが最初に始めたかは知らないが、彼らはギルドごとにバッチを作って身に着けている。
議員や弁護士がそれ一つで周囲に威厳をアピールできるように、ギルドのバッチをつけることは攻略者としての優秀さの証ともなる。
(ギルドか……そりゃ、入れたらすごいことだけど)
目標であるということは、それだけ倍率が高いということだ。
就職活動において志望したからといって大手企業に入れないのと同じで、人材は常に募集しているが、誰でも簡単に所属できるわけではない。
ギルド同士での案件の奪い合いなど競争は激しく、求められるのは有能な攻略者のみ。
ゆえにギルドに所属するには所属試験を突破したり、スカウトを受けたり、狭き門を潜り抜ける必要がある。
だからこそ……。
「いやぁ、さすがにそこまでは……。俺なんかじゃきっと役に立ちませんし……」
「え~、そんなことないと思うけどな」
「いやいや、そんなことありますよ……」
またまたなにを仰いますか。
そんなテンションで時杉が苦笑いを浮かべる。
だいたい仮に所属できたとして、こんなコミュ障がうまく馴染めるかという心配もある。
先日の演習においても、相手はたかが同い年のクラスメイトなのに、まともに発言もできずオロオロすることしかできなかったばかりである。
こんな奴が多種多様な人間で組織されるギルドでやっていけるとは到底思えない。
「ふ~ん。じゃあ、この先もし誰かに『うちのギルドにこない?』とか誘われても、所属する気はないって感じ?」
「まあ……そうなりますかね」
そうとも。
自分は所詮、日陰にいるべき人間。日の当たる世界は向かない。
だが、そこでデルタがボソッと呟いた。
「……そっか、残念」
「え……?」
「あ、ううん。こっちの話」
「?」
聞き返した時杉に、デルタがやや慌てたように両手を振る。
(なんだろう……今、残念って聞こえたような気が……)
よく聞き取れなかったが、時杉はそんな気がした。
(もしかして、俺といっしょにギルドを目指したかった……とか? いやいや、そんなまさかな)
頭に浮かんだ妄想を、すぐさま否定する。
(だいたい、デルタさんほどの実力があれば黙っていても引く手数多だろうし。なんならもうどこかのギルドから声がかかってるかも……)
いっしょにダンジョンに潜ったことで、デルタの実力は知っている。
底辺の時杉からすれば上位ランクの攻略者の世界はよくわからないが、あれはどう見てもそんじょそこらの高校生のレベルを遥かに超えていた。
そんな彼女が自分と同じギルドを目指す?
ありえない。さっきのはきっと幻聴だろう。
それよりも、今考えるべきことは別にある。
(でも、たしかになぁ。攻略者として目指すところ……か)
いざ尋ねられると悩んでしまう。
そもそも日々を生き抜くことに必死な底辺ぼっちに、そんな未来のことを考える余裕など今までなかった。
だが、そうは言っても気づけばもう高校2年生。
ちょこちょこと進路の話題も出てきている。
(将来か……そろそろ真剣に考えないとだよな)
若干憂鬱な気持ちになりつつ、氷の解け切ったアイスコーヒーを飲み干す。
そして週明け。
そんな時杉を待ち受けていたのは、思いもよらぬ展開だった。
ギルドとは、パーティーよりも大規模な攻略者の集まりである。
国や企業が発注するダンジョン攻略に関する様々な依頼をこなし、その代わりに報酬を得る。
言ってしまえば古来の傭兵団や、あるいはダンジョン攻略の代行を請け負う会社と呼んでもいい。
ダンジョン攻略で稼げるようになってから、ギルドは爆発的に増大した。
今や大手のギルドに至っては年商で数百億だの数千億だのを叩き出すほどである。
「俺が……ですか?」
「うん、興味とかないの?」
「それは……」
ギルドへの所属は攻略者の一つの目標……夢でもある。
安定した仕事の供給や高い収入が見込めるし、なにより箔(はく)が付く。
どこが最初に始めたかは知らないが、彼らはギルドごとにバッチを作って身に着けている。
議員や弁護士がそれ一つで周囲に威厳をアピールできるように、ギルドのバッチをつけることは攻略者としての優秀さの証ともなる。
(ギルドか……そりゃ、入れたらすごいことだけど)
目標であるということは、それだけ倍率が高いということだ。
就職活動において志望したからといって大手企業に入れないのと同じで、人材は常に募集しているが、誰でも簡単に所属できるわけではない。
ギルド同士での案件の奪い合いなど競争は激しく、求められるのは有能な攻略者のみ。
ゆえにギルドに所属するには所属試験を突破したり、スカウトを受けたり、狭き門を潜り抜ける必要がある。
だからこそ……。
「いやぁ、さすがにそこまでは……。俺なんかじゃきっと役に立ちませんし……」
「え~、そんなことないと思うけどな」
「いやいや、そんなことありますよ……」
またまたなにを仰いますか。
そんなテンションで時杉が苦笑いを浮かべる。
だいたい仮に所属できたとして、こんなコミュ障がうまく馴染めるかという心配もある。
先日の演習においても、相手はたかが同い年のクラスメイトなのに、まともに発言もできずオロオロすることしかできなかったばかりである。
こんな奴が多種多様な人間で組織されるギルドでやっていけるとは到底思えない。
「ふ~ん。じゃあ、この先もし誰かに『うちのギルドにこない?』とか誘われても、所属する気はないって感じ?」
「まあ……そうなりますかね」
そうとも。
自分は所詮、日陰にいるべき人間。日の当たる世界は向かない。
だが、そこでデルタがボソッと呟いた。
「……そっか、残念」
「え……?」
「あ、ううん。こっちの話」
「?」
聞き返した時杉に、デルタがやや慌てたように両手を振る。
(なんだろう……今、残念って聞こえたような気が……)
よく聞き取れなかったが、時杉はそんな気がした。
(もしかして、俺といっしょにギルドを目指したかった……とか? いやいや、そんなまさかな)
頭に浮かんだ妄想を、すぐさま否定する。
(だいたい、デルタさんほどの実力があれば黙っていても引く手数多だろうし。なんならもうどこかのギルドから声がかかってるかも……)
いっしょにダンジョンに潜ったことで、デルタの実力は知っている。
底辺の時杉からすれば上位ランクの攻略者の世界はよくわからないが、あれはどう見てもそんじょそこらの高校生のレベルを遥かに超えていた。
そんな彼女が自分と同じギルドを目指す?
ありえない。さっきのはきっと幻聴だろう。
それよりも、今考えるべきことは別にある。
(でも、たしかになぁ。攻略者として目指すところ……か)
いざ尋ねられると悩んでしまう。
そもそも日々を生き抜くことに必死な底辺ぼっちに、そんな未来のことを考える余裕など今までなかった。
だが、そうは言っても気づけばもう高校2年生。
ちょこちょこと進路の話題も出てきている。
(将来か……そろそろ真剣に考えないとだよな)
若干憂鬱な気持ちになりつつ、氷の解け切ったアイスコーヒーを飲み干す。
そして週明け。
そんな時杉を待ち受けていたのは、思いもよらぬ展開だった。
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