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21日目(温泉)

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 彼女の名はラフィ。
 この日は公務で遠方に出向いたついでに、地元の温泉を訪れていた。


「はぁ、気持ちいい。やはり温泉は素晴らしいですね。しかも露天風呂。温かいお湯と涼しい外気の差が心地よくて、それでいて景色も綺麗で癒されます」

「――ですね」

 カポーン。


「あなたは……」
「どうも、僕です」

 そう言って、男は頭にタオルを乗せながらニコリとほほ笑んだ。


「僕がいることに驚かないのですね」
「どうせお風呂だろうとどこだろうと関係ないのはもう知ってますから」
「もしかして露天にいたのは僕が侵入しやすいように配慮を?」
「違います」
「あらら。ところでどうです? せっかくですのでお背中でもお流ししましょうか?」
「……後ろだけなら。ただし! 昨日みたいに興奮して下半身を膨張させないでくださいね!」
「ハハ、わかっていますとも」


 ゴシゴシ。

「……」
「……」

 ゴシゴシ。

「……」
「……」

 ゴシゴシ。

「……」
「……」


「終わりました」
「……」
「どうしました?」
「……いえ」
「そうですか。しからば」

 シュバッ。




「まさか本当に背中を流すだけで帰るなんて……ハッ!? 私はなにを……///」
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