この気難しそうな姫様をちょうど30日で落とします

18日目（ミルク）

　彼女の名はラフィ。
　突然だが彼女は今、テーブルの上に置かれた “あるもの”と戦っていた。


「う～ん……」
「どうされたのです、難しい顔をして？ おや、そのコップに注がれた白い液体はもしや……」
「ええ」
「……姫様の母乳？」
「違います！ なにを仰っているのですか！？ 牛乳です！！」
「でしょうね」
「ほんとうにあなたという人は……」
「どうも、僕です」

　そう言って、男は己の変態性を誇るようにニコリとほほ笑んだ。


「それで、先ほどからうんうん唸っているところを見ると、もしや姫様は牛乳がお嫌いなのですか？」
「ええ、実は」
「だったら残してしまえばいいのでは？」
「それがそういうわけにも。この牛乳は今朝牧場の方々がぜひ私にと届けてくれたもの。無下にはできません。それに領主としてお礼の手紙に感想も書き添えたいですし」
「殊勝な心掛けですね。ですが牧場の方も苦手なものを無理して飲んでもらうのは不本意なのでは？」
「……正論ですね」
「そうだ。料理やお菓子に利用してはいかがでしょう？ 例えばシチューやケーキなど。その方が素直でいい感想が書けるでしょう」
「なるほど、それはいい考えですね。ぜひそうします。となると、あとは今注いであるこの分をどうするかですが……」
「それなら僕が代わりに飲みましょう」
「え」

　ゴクゴク。

「ぷはっ。たしかにおいしいですね。牧場の方が送りたくなる気持ちも分かります……おや？ どうかされましたか？」
「……いえ」
「？」
「あの、お引き取りを。早速この後お菓子を作ってみたいと思うので……」
「そうですか。しからば」

　シュバッ。




「…………間接キス///」