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ジュリア
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ちょっとした心の変化を感じた翌朝。
「リュゼ!起きろ!!ジュリアがついさっき目を覚ましたらしいぞ!」
腕をバチバチ叩かれながら、痛みを感じるとともに目が覚める。その報告は待ちに待ったものだ。寝ていただけだが。
ガバッと身を起こし、ベッドから下りて着替える。布団はズィーリオスに起こされる時に、毎回剥ぎ取られているので、俺の起床時は近くにない。布団があるといつまで経っても俺が起きてこないことを知っているのだ。今日みたいな日はともかく、普段は別に寝ていても良いじゃないか。なあ?
「そう思うだろ?」
「思わないよ」
ちっ。同意を取って布団を取り返そうと思ったのに。何故2分の1の確率の、否定の方を選択したんだ?こういう時って大概、よくわからなくても肯定するものだろう?
「なんでそう思うんだよ」
ちょっと声に怨情が乗ってしまったが、まあ、仕方ないだろ。少々むっとしながら尋ねる。
「なんとなくだ。同意してはいけない気がした。そんなことよりも、早く準備をしな?」
俺の心地よい睡眠計画の第一歩が、そんなこととして流された・・・。それに今回は以前のように、独り言を念話で話てしまうという失態を犯さないように気を付けていたのに。感づかれるとは。ズィーリオス、恐ろしい子っ!
そうこうしている間に準備が出来たので、なぜか場所を知っているズィーリオスの案内のもと、ジュリアの部屋へと向かうことにした。
ジュリアの部屋に到着すると、部屋の扉は開かれていた。中を覗くとそこには、上半身を起こした状態のジュリアに抱き着いているダガリスと、エリム、そのエリムに抱っこされている、ポカーンとした5歳ぐらいのエメラルドグリーンの髪と目をした、小さな男の子がいた。
あー、なんとなく状況が分かった気がする。きっとあれだな。小さな男の子はジュリアの弟君だろう。色は一緒じゃないけど、顔立ちがなんとなく似ている気がする。
うん?弟君は病気で寝込んでたのでは?薬草は?ジュリア救出時、本人は何も持っていなかったけど?あれ?まー考えても分からないからダガリスにでも聞こう。知っているはずだし。だけど今はムリそうだ。後回しにしよう。
でだ。そして姉弟は部屋が近いだろうから、きっとこの部屋に一番乗りしたのだろう。弟君は、ジュリアの目が覚めたと聞いてすぐにやって来てジュリアに抱き着いていたが、後からダガリスがやって来てジュリアを現状のように抱きしめたのだな。その時、エリムも一緒にやって来ていて、板挟みになる弟君をダガリスから保護したのだろう。だから弟君は被害を免れたが、生憎ジュリアは逃れられなかった。だって今、抱き締められているジュリアがめちゃくちゃ死にそうな顔をしてるからな。ってやばくないか!?救出されて、今さっき目覚めたばかりだぞ!
「おい!何してんだ、ダガリス!!ジュリアがやばい!死ぬ!」
急いでダガリスの側まで行き、その頭を引っぱたく。すると、ハッとしたダガリスが拘束していたジュリアを解放した。
解放されたジュリアはそのままベッドに突っ伏し、浅い呼吸を繰り返しながら、時折呻き声を漏らしている。床に降ろされた弟君はベッドによじ登り、ジュリアを案じていた。
その間、ダガリスはベッドの下で正座をして、ジュリアに謝罪している。そして俺は、ダガリスの頭を引っぱたいた後、ズィーリオスから小言を言われていた。人の頭を叩くんじゃない、と。
えー、あれは仕方ないって。そうしないとジュリアがやばかったじゃないか。俺は人命救助をしただけであってな?あ・・・、すみません、反省してます。してますって。許してください。
なぜか部屋の中には、2人の人間が正座をしている光景が出来上がっていた。
俺、完全にとばっちりなんだけど。
1人ポツンと所在なさげに突っ立っているエリムに、視線で助けを乞う。しかし、哀憐を含んだ目で見返され、ゆっくりと首を横に振られた。え、薄情な。
暫く視線の攻防時間が続き、気付けばジュリアやダガリス、弟君にまで、哀憐を含んだ目で見られていた。
最近のズィーリオスは兄化していたはずだが、今のズィーリオスはまるで母親だな。昨晩はひさしぶりに可愛い弟だったのに。色んな役職をしていることで、忙しくて大変ではないのだろうか?
ズィーリオスの話をいつの間にか聞き流し、別の事を考えていると、ズィーリオスが溜息を吐き、もういいやとばかりに天を仰いだ。
どうしたのだろう。喋り疲れたのか?
「うん。リュゼがきちんと話を聞いているわけないよね。はぁ」
ああ、俺の意識が再び逸れていることを察したのか。ごめんって。俺だって気づいたらあれこれ考えてて逸れているんだよ。気付いたら逸れているんだから、自分ではどうしようもないんだって。
ズィーリオスが呟いた言葉に色々とダガリス達は察していた。そのため先ほどまでとは違い、ズィーリオスに対して不憫な者を見る目を向けていたことなど、俺はまた思考が逸れていことで気づくことはなかった。
ズィーリオスが折れるという形で終わった反省会?は、弟君の言葉をもって自己紹介の場へと変わる。
「お姉ちゃん。この人たち誰?」
「あ、そうだった。ジュドはこの2人のこと知らないのか」
ジュリアが俺たちのことを簡単に説明し、反対に、俺たちに弟君を紹介してくれた。ずっと弟君を弟として見做していたが、本当に弟のようで安心した。もし弟じゃなかったら、ね?すでにジュリアの弟は、弟君呼びで定着しちゃったんだから。今更弟じゃないとか言われたら俺の頭がパニックだった。いや、ほんと。
そうして俺が変な安堵をしている間に、ジュリアが俺とズィーリオスの2人との関係を簡単に教えていた。薬草との交換のために、無断でロザロ山に行ったことは言わないようだ。時折ちらりとダガリスの方へ視線を向けていることから、あの時の説教はかなり堪えたのだろう。
あ、そうそう。忘れていたけど、薬草はどうなったんだろう。弟君は元気みたいだから何かしらあったのは想像がつくのだけれど。
仲良く姉弟でお喋りしているジュリア達姉弟を尻目に、そっとダガリスに近づき、小声で話しかける。
「なあ、ダガリス。ジュリアの弟君も元気になったみたいだが、何があったんだ?」
視線だけジュリア達に向けたまま尋ねる。ダガリスも同じくジュリア達に視線を向けたまま、俺に応じて小声で応える。
「その件も含めて、あの後何があったかとかの話があるんだ。エリム殿が来ている理由も説明しよう。この後良いか?」
「もちろんだ。だけど、俺は部外者だが、重要そうな話もあるのに聞いてもいいのか?」
「構わない。寧ろ、もう君たちは部外者とは言えないだろ?聞く権利がある」
「そうか。なら是非とも教えてもらいたい」
ここでの話は終わったとばかりに、ダガリスがジュリア達に近づき、この後俺たちは話し合いがあるということを伝える。自分はその話し合いに参加出来ないということに、ちょっとばかし不服そうではあったが、大人しく了承していた。
この部屋に来て随分時間が経っていたようだ。ダガリスは、昼前にはその話し合いを終わらせたいらしく、早速話し合いをするために、ジュリア達姉弟以外は部屋を出て行く。
最後に俺も、ズィーリオスの後を追って部屋を出ようとして、廊下に足を踏み出しかけた時、ちょんちょんと服を引っ張られた感覚がした。何だろうと振り返ると、俺の服をその小さな手で握りしめた弟君がいた。
「どうした?」
「あの、お姉ちゃんを助けてくれてありがとう」
その心根を反映しているような、透き通るような美しい瞳が俺を真っすぐに見上げていた。小さな子はやっぱり可愛い。自然と緩やかに口角が上がる。弟君の前にしゃがみ込んだ。
「元気になって良かったな」
「うん!」
「これからは君がお姉ちゃんを守ってあげな?」
「ぼく、頑張る!!おじいちゃんみたいに強くなる!」
「そうか、大変だが頑張るんだぞ」
それだけ言って弟君の頭をわしゃわしゃと撫でて立ち上がる。そのままジュリアに視線を向けて、退出の挨拶を済まし、振り返って今度こそ部屋から立ち去った。
背後で顔を両手で隠したジュリアが、弟君に「お顔真っ赤。お熱大丈夫?」と心配されていたことに知らずに。
「リュゼ!起きろ!!ジュリアがついさっき目を覚ましたらしいぞ!」
腕をバチバチ叩かれながら、痛みを感じるとともに目が覚める。その報告は待ちに待ったものだ。寝ていただけだが。
ガバッと身を起こし、ベッドから下りて着替える。布団はズィーリオスに起こされる時に、毎回剥ぎ取られているので、俺の起床時は近くにない。布団があるといつまで経っても俺が起きてこないことを知っているのだ。今日みたいな日はともかく、普段は別に寝ていても良いじゃないか。なあ?
「そう思うだろ?」
「思わないよ」
ちっ。同意を取って布団を取り返そうと思ったのに。何故2分の1の確率の、否定の方を選択したんだ?こういう時って大概、よくわからなくても肯定するものだろう?
「なんでそう思うんだよ」
ちょっと声に怨情が乗ってしまったが、まあ、仕方ないだろ。少々むっとしながら尋ねる。
「なんとなくだ。同意してはいけない気がした。そんなことよりも、早く準備をしな?」
俺の心地よい睡眠計画の第一歩が、そんなこととして流された・・・。それに今回は以前のように、独り言を念話で話てしまうという失態を犯さないように気を付けていたのに。感づかれるとは。ズィーリオス、恐ろしい子っ!
そうこうしている間に準備が出来たので、なぜか場所を知っているズィーリオスの案内のもと、ジュリアの部屋へと向かうことにした。
ジュリアの部屋に到着すると、部屋の扉は開かれていた。中を覗くとそこには、上半身を起こした状態のジュリアに抱き着いているダガリスと、エリム、そのエリムに抱っこされている、ポカーンとした5歳ぐらいのエメラルドグリーンの髪と目をした、小さな男の子がいた。
あー、なんとなく状況が分かった気がする。きっとあれだな。小さな男の子はジュリアの弟君だろう。色は一緒じゃないけど、顔立ちがなんとなく似ている気がする。
うん?弟君は病気で寝込んでたのでは?薬草は?ジュリア救出時、本人は何も持っていなかったけど?あれ?まー考えても分からないからダガリスにでも聞こう。知っているはずだし。だけど今はムリそうだ。後回しにしよう。
でだ。そして姉弟は部屋が近いだろうから、きっとこの部屋に一番乗りしたのだろう。弟君は、ジュリアの目が覚めたと聞いてすぐにやって来てジュリアに抱き着いていたが、後からダガリスがやって来てジュリアを現状のように抱きしめたのだな。その時、エリムも一緒にやって来ていて、板挟みになる弟君をダガリスから保護したのだろう。だから弟君は被害を免れたが、生憎ジュリアは逃れられなかった。だって今、抱き締められているジュリアがめちゃくちゃ死にそうな顔をしてるからな。ってやばくないか!?救出されて、今さっき目覚めたばかりだぞ!
「おい!何してんだ、ダガリス!!ジュリアがやばい!死ぬ!」
急いでダガリスの側まで行き、その頭を引っぱたく。すると、ハッとしたダガリスが拘束していたジュリアを解放した。
解放されたジュリアはそのままベッドに突っ伏し、浅い呼吸を繰り返しながら、時折呻き声を漏らしている。床に降ろされた弟君はベッドによじ登り、ジュリアを案じていた。
その間、ダガリスはベッドの下で正座をして、ジュリアに謝罪している。そして俺は、ダガリスの頭を引っぱたいた後、ズィーリオスから小言を言われていた。人の頭を叩くんじゃない、と。
えー、あれは仕方ないって。そうしないとジュリアがやばかったじゃないか。俺は人命救助をしただけであってな?あ・・・、すみません、反省してます。してますって。許してください。
なぜか部屋の中には、2人の人間が正座をしている光景が出来上がっていた。
俺、完全にとばっちりなんだけど。
1人ポツンと所在なさげに突っ立っているエリムに、視線で助けを乞う。しかし、哀憐を含んだ目で見返され、ゆっくりと首を横に振られた。え、薄情な。
暫く視線の攻防時間が続き、気付けばジュリアやダガリス、弟君にまで、哀憐を含んだ目で見られていた。
最近のズィーリオスは兄化していたはずだが、今のズィーリオスはまるで母親だな。昨晩はひさしぶりに可愛い弟だったのに。色んな役職をしていることで、忙しくて大変ではないのだろうか?
ズィーリオスの話をいつの間にか聞き流し、別の事を考えていると、ズィーリオスが溜息を吐き、もういいやとばかりに天を仰いだ。
どうしたのだろう。喋り疲れたのか?
「うん。リュゼがきちんと話を聞いているわけないよね。はぁ」
ああ、俺の意識が再び逸れていることを察したのか。ごめんって。俺だって気づいたらあれこれ考えてて逸れているんだよ。気付いたら逸れているんだから、自分ではどうしようもないんだって。
ズィーリオスが呟いた言葉に色々とダガリス達は察していた。そのため先ほどまでとは違い、ズィーリオスに対して不憫な者を見る目を向けていたことなど、俺はまた思考が逸れていことで気づくことはなかった。
ズィーリオスが折れるという形で終わった反省会?は、弟君の言葉をもって自己紹介の場へと変わる。
「お姉ちゃん。この人たち誰?」
「あ、そうだった。ジュドはこの2人のこと知らないのか」
ジュリアが俺たちのことを簡単に説明し、反対に、俺たちに弟君を紹介してくれた。ずっと弟君を弟として見做していたが、本当に弟のようで安心した。もし弟じゃなかったら、ね?すでにジュリアの弟は、弟君呼びで定着しちゃったんだから。今更弟じゃないとか言われたら俺の頭がパニックだった。いや、ほんと。
そうして俺が変な安堵をしている間に、ジュリアが俺とズィーリオスの2人との関係を簡単に教えていた。薬草との交換のために、無断でロザロ山に行ったことは言わないようだ。時折ちらりとダガリスの方へ視線を向けていることから、あの時の説教はかなり堪えたのだろう。
あ、そうそう。忘れていたけど、薬草はどうなったんだろう。弟君は元気みたいだから何かしらあったのは想像がつくのだけれど。
仲良く姉弟でお喋りしているジュリア達姉弟を尻目に、そっとダガリスに近づき、小声で話しかける。
「なあ、ダガリス。ジュリアの弟君も元気になったみたいだが、何があったんだ?」
視線だけジュリア達に向けたまま尋ねる。ダガリスも同じくジュリア達に視線を向けたまま、俺に応じて小声で応える。
「その件も含めて、あの後何があったかとかの話があるんだ。エリム殿が来ている理由も説明しよう。この後良いか?」
「もちろんだ。だけど、俺は部外者だが、重要そうな話もあるのに聞いてもいいのか?」
「構わない。寧ろ、もう君たちは部外者とは言えないだろ?聞く権利がある」
「そうか。なら是非とも教えてもらいたい」
ここでの話は終わったとばかりに、ダガリスがジュリア達に近づき、この後俺たちは話し合いがあるということを伝える。自分はその話し合いに参加出来ないということに、ちょっとばかし不服そうではあったが、大人しく了承していた。
この部屋に来て随分時間が経っていたようだ。ダガリスは、昼前にはその話し合いを終わらせたいらしく、早速話し合いをするために、ジュリア達姉弟以外は部屋を出て行く。
最後に俺も、ズィーリオスの後を追って部屋を出ようとして、廊下に足を踏み出しかけた時、ちょんちょんと服を引っ張られた感覚がした。何だろうと振り返ると、俺の服をその小さな手で握りしめた弟君がいた。
「どうした?」
「あの、お姉ちゃんを助けてくれてありがとう」
その心根を反映しているような、透き通るような美しい瞳が俺を真っすぐに見上げていた。小さな子はやっぱり可愛い。自然と緩やかに口角が上がる。弟君の前にしゃがみ込んだ。
「元気になって良かったな」
「うん!」
「これからは君がお姉ちゃんを守ってあげな?」
「ぼく、頑張る!!おじいちゃんみたいに強くなる!」
「そうか、大変だが頑張るんだぞ」
それだけ言って弟君の頭をわしゃわしゃと撫でて立ち上がる。そのままジュリアに視線を向けて、退出の挨拶を済まし、振り返って今度こそ部屋から立ち去った。
背後で顔を両手で隠したジュリアが、弟君に「お顔真っ赤。お熱大丈夫?」と心配されていたことに知らずに。
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