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魔素濃度
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なんでズィーリオスがここに居るんだ?さっき出て行ったばかりだぞ。一応、契約による繋がりで確認しよう。現在地は・・・俺の目の前だな。本物か。
それにしても帰って来るのが早すぎる。まだ5分も経ってないぞ。ヴァルードからまだ何も教わっていないのに。
俺のいる浮島まで泳いできて、陸に上がる。可愛い。犬かきだ。やっぱり水から顔を出したら、その泳ぎ方になるんだ。まあ、潜水中も犬かきの様な泳ぎ方だったけど。明らかにあれは水の魔法を使っている。じゃないとあれほど潜水が出来るわけがないもんな。
そして不思議なことに、陸に上がったズィーリオスはやっぱり濡れていない。防水加工されて・・・るわけないな。あ、ダメだ。今気にしないといけないのは別のことだ。
「どうしたんだ?ズィー。道が分からないのか?」
『いや、ちゃんと辿りつけたんだが・・・その、何もなかったんだ』
「は?」
『魔素は確かにあるんだが、明らかに減っていたんだ』
『そんなわけがないじゃなぁい。あそこから離れる時ぃ、確かに異常なほどの魔素濃度だったわよぉ?あの場でそれらが薄まるほどのぉ、魔力消耗は誰もしていないじゃなぁい』
『じゃが、それが本当であれば、いよいよおかしなことになってきたのぉ』
誰も、魔素が薄まるほどの魔法を行使していないのに、ズィーリオスが問題ないと感じるほどにまで魔素が減っていたとは何が起きたんだ?
「魔素が減っていて原因究明が出来なかったから、戻って来たということなんだよな?」
『そうだ』
『変ねぇー。今度は私が行って見て来るわぁ』
「精霊王でも気分が悪くなるほどだったんだろ?無理しない方が良いんじゃないか?」
『大丈夫よぉ。聖獣が言っていることが本当だったらねぇ?』
『だから本当のことだと言っているだろ』
『はいはいー』
ズィーリオスをあしらうようにひらひらと手を振って、精霊王はふわっと消えて行った。
『しかし、魔素濃度が元に戻っているのであれば、一体あの時は何故、あれ程の魔素に溢れていたのじゃろうな』
「心当たりはないのか?」
『そうじゃのぉー』
『いや、まさか。・・・でも。そんなことは・・・!』
「ズィー?どうした?」
よほど混乱しているのか、心の中の葛藤が念話で漏れ聞こえていた。それに、チラチラと俺の方を向いたり逸らしたりを繰り返している。何か言いたいことでもあるのか?言いたいことを言いよどむような、そんな仲でもないだろうに。
『・・・思い当たる節、ある』
「『本当か!?』」
ヴァルードではなくズィーリオスからの発言に、思わず声を上げて反応し、両手でズィーリオスの顔を挟むように捕まえる。そのまま顔を覗き込むように、視線を固定させてじっと見据える。
『わかった!話すから手を放してくれ!喋りにくい。』
「念話で話してるんだから、話し難いとかないじゃん」
『ぐっ!せ、精神的な話し難さだ』
「えー、俺らの仲だぞ?」
きっと、先ほどのズィーリオスの態度から考えて、俺に関係があることなのだろう。だが、一向に話そうとしてくれない。
まるで初めてアーデに会った時のようだ。あの時のアーデは確か、俺が聖域に入れることに驚いていた。そしてそこから何かを察したようだった。ズィーリオスの狼狽え具合が、その時のアーデの反応と似ている。その後、アーデは何も教えてくれなかった。だけれど、もしそのことが今回の件に関係しているのであれば、俺は知りたい。何を隠しているんだ?
『戻ったわぁー』
再びズィーリオスに問いかけようと口を開きかけた瞬間、精霊王がいきなり現れる。半開きになった口は音を発することなく閉じられる。ズィーリオスはあからさまに安堵している様だ。後でまた聞けばいいか。ズィーリオスを開放し、精霊王に向き直る。
「お帰り。どうだった?」
『本当に魔素濃度が薄くなっていたわぁ。あれぐらいならぁ、初めにいた鍾乳洞の部屋と同じぐらいかぁ、少し濃いぐらいの濃度よぉ。リュゼがいても大丈夫だと思うわぁ』
『いいタイミングで帰って来てくれた。お前に感謝する日が来るとは思わなかったぞ』
『え?何ぃー?聖獣がそんなこと言うなんてぇ、やっぱり魔素の影響で頭がおかしくなったんじゃなぁい?』
『頭がおかしいだと。は!礼なんて言うべきじゃなかったな。取り消す!』
ズィーリオスは、俺に先ほどのことをぶり返されるのがそんなに嫌なのか、いつも以上に精霊王に対してがっつくように反抗する。
そこまでするほど知られたくないことなのだろうか。もしかして、人に知られてはいけない内容なのか?聖獣としての決まり事的な?だったらあまり困らせてはいけないか。俺自身が何か関わっていそうだから、聞く権利はありそうだけれど。
でもズィーリオスのことだ。本当に、人に話してはいけないことなら仕方ないが、そうでなかったら、いつかは話してくれるだろう。どんなに仲が良くても、言えない秘密の1つや2つは誰にでもあるだろうし。
『なあ、管理者よ。先ほどの心当たりとはなんじゃ?』
『「・・・・・」』
『なにそれぇ?』
空気の読めない奴が1人いたようだ。空気を読んで生きることは、必要ない生き方をしていたからかもしれないが。
俺とズィーリオスが黙ったままでいる間に、ヴァルードは何のことか知らない精霊王に説明をし出した。
『へぇー!心当たりがあったのねぇ。それは私も知りたいわぁ!』
正面には精霊王。背後にはヴァルード。横には俺。ほぼ完全包囲。ズィーリオスは説明から逃れられないことを悟ったようで、大きな溜息を吐き出した。
ドンマイ、ズィーリオス。
言葉を選ぶようにゆっくりと、ズィーリオスは話し始めた。
『あの場所にある、聖域の中で保管しているものが、原因かもしれない』
『聖域内に封印されている物が、外部へ影響を与えるなど聞いたこともないのぉ。長い時間が経っている間に、そのようなことも起こり得るようになっていたのじゃな』
『そんなバカなこと、起こり得るわけがないでしょうぉ。昔も今も異常なことよぉ!内部の一切の影響を封じ込めるために、管理者の異常なレベルの結界が必要になるんだからぁ!あなたも知っているでしょおぉ!』
『そうじゃった』
「いったい何が聖域にあるんだ?」
俺の質問は、ズィーリオス以外のこの場の全員が知りたかったことのようだ。騒がしく念話を交わしていた精霊王とヴァルードが口を噤む。
『・・・・・魔法書。魔法書があるらしい。』
実際に自分の目で確認してないからだろう、推量の形で返ってきた。それにしても、魔法書、か。聖域内にあるということは、まず、間違いなく。
「禁術か」
『禁術、と言えるだろうな。だけど、今、人の世に出ている禁術と言われるモノよりも、遥かに危険な代物だ』
考えてみればそうだ。世界で禁術と呼ばれている物は、各国が、人が決めた物だ。人が危険だと判断し、自ずと使用せずに規制を掛けたものが、聖獣たちによる封印対象にならなかったものだ。また、そこまで危険視されていない可能性もある。そんな禁術よりも、遥かに危険な代物とは一体どれ程のものなのか。
『そんなものがあの聖域にはあるのねぇ。けれどぉ、それとあの魔素濃度がどう関係するわけぇ?』
『そうじゃな。関係するようには思えぬが』
その聖域にある魔法書が、とにかく危険な物だということは分かった。しかし、関係性を見いだせない。
疑問に思う俺たちを無視し、ズィーリオスが急に立ち上がる。一瞬迷う様な素振りを見せた後、振り払う様に頭を振り、俺を見据える。
『もう一度行こう。実際に見せた方が良い。それに・・・・・、どうせまた、行かなければならないことになるだろうから』
それにしても帰って来るのが早すぎる。まだ5分も経ってないぞ。ヴァルードからまだ何も教わっていないのに。
俺のいる浮島まで泳いできて、陸に上がる。可愛い。犬かきだ。やっぱり水から顔を出したら、その泳ぎ方になるんだ。まあ、潜水中も犬かきの様な泳ぎ方だったけど。明らかにあれは水の魔法を使っている。じゃないとあれほど潜水が出来るわけがないもんな。
そして不思議なことに、陸に上がったズィーリオスはやっぱり濡れていない。防水加工されて・・・るわけないな。あ、ダメだ。今気にしないといけないのは別のことだ。
「どうしたんだ?ズィー。道が分からないのか?」
『いや、ちゃんと辿りつけたんだが・・・その、何もなかったんだ』
「は?」
『魔素は確かにあるんだが、明らかに減っていたんだ』
『そんなわけがないじゃなぁい。あそこから離れる時ぃ、確かに異常なほどの魔素濃度だったわよぉ?あの場でそれらが薄まるほどのぉ、魔力消耗は誰もしていないじゃなぁい』
『じゃが、それが本当であれば、いよいよおかしなことになってきたのぉ』
誰も、魔素が薄まるほどの魔法を行使していないのに、ズィーリオスが問題ないと感じるほどにまで魔素が減っていたとは何が起きたんだ?
「魔素が減っていて原因究明が出来なかったから、戻って来たということなんだよな?」
『そうだ』
『変ねぇー。今度は私が行って見て来るわぁ』
「精霊王でも気分が悪くなるほどだったんだろ?無理しない方が良いんじゃないか?」
『大丈夫よぉ。聖獣が言っていることが本当だったらねぇ?』
『だから本当のことだと言っているだろ』
『はいはいー』
ズィーリオスをあしらうようにひらひらと手を振って、精霊王はふわっと消えて行った。
『しかし、魔素濃度が元に戻っているのであれば、一体あの時は何故、あれ程の魔素に溢れていたのじゃろうな』
「心当たりはないのか?」
『そうじゃのぉー』
『いや、まさか。・・・でも。そんなことは・・・!』
「ズィー?どうした?」
よほど混乱しているのか、心の中の葛藤が念話で漏れ聞こえていた。それに、チラチラと俺の方を向いたり逸らしたりを繰り返している。何か言いたいことでもあるのか?言いたいことを言いよどむような、そんな仲でもないだろうに。
『・・・思い当たる節、ある』
「『本当か!?』」
ヴァルードではなくズィーリオスからの発言に、思わず声を上げて反応し、両手でズィーリオスの顔を挟むように捕まえる。そのまま顔を覗き込むように、視線を固定させてじっと見据える。
『わかった!話すから手を放してくれ!喋りにくい。』
「念話で話してるんだから、話し難いとかないじゃん」
『ぐっ!せ、精神的な話し難さだ』
「えー、俺らの仲だぞ?」
きっと、先ほどのズィーリオスの態度から考えて、俺に関係があることなのだろう。だが、一向に話そうとしてくれない。
まるで初めてアーデに会った時のようだ。あの時のアーデは確か、俺が聖域に入れることに驚いていた。そしてそこから何かを察したようだった。ズィーリオスの狼狽え具合が、その時のアーデの反応と似ている。その後、アーデは何も教えてくれなかった。だけれど、もしそのことが今回の件に関係しているのであれば、俺は知りたい。何を隠しているんだ?
『戻ったわぁー』
再びズィーリオスに問いかけようと口を開きかけた瞬間、精霊王がいきなり現れる。半開きになった口は音を発することなく閉じられる。ズィーリオスはあからさまに安堵している様だ。後でまた聞けばいいか。ズィーリオスを開放し、精霊王に向き直る。
「お帰り。どうだった?」
『本当に魔素濃度が薄くなっていたわぁ。あれぐらいならぁ、初めにいた鍾乳洞の部屋と同じぐらいかぁ、少し濃いぐらいの濃度よぉ。リュゼがいても大丈夫だと思うわぁ』
『いいタイミングで帰って来てくれた。お前に感謝する日が来るとは思わなかったぞ』
『え?何ぃー?聖獣がそんなこと言うなんてぇ、やっぱり魔素の影響で頭がおかしくなったんじゃなぁい?』
『頭がおかしいだと。は!礼なんて言うべきじゃなかったな。取り消す!』
ズィーリオスは、俺に先ほどのことをぶり返されるのがそんなに嫌なのか、いつも以上に精霊王に対してがっつくように反抗する。
そこまでするほど知られたくないことなのだろうか。もしかして、人に知られてはいけない内容なのか?聖獣としての決まり事的な?だったらあまり困らせてはいけないか。俺自身が何か関わっていそうだから、聞く権利はありそうだけれど。
でもズィーリオスのことだ。本当に、人に話してはいけないことなら仕方ないが、そうでなかったら、いつかは話してくれるだろう。どんなに仲が良くても、言えない秘密の1つや2つは誰にでもあるだろうし。
『なあ、管理者よ。先ほどの心当たりとはなんじゃ?』
『「・・・・・」』
『なにそれぇ?』
空気の読めない奴が1人いたようだ。空気を読んで生きることは、必要ない生き方をしていたからかもしれないが。
俺とズィーリオスが黙ったままでいる間に、ヴァルードは何のことか知らない精霊王に説明をし出した。
『へぇー!心当たりがあったのねぇ。それは私も知りたいわぁ!』
正面には精霊王。背後にはヴァルード。横には俺。ほぼ完全包囲。ズィーリオスは説明から逃れられないことを悟ったようで、大きな溜息を吐き出した。
ドンマイ、ズィーリオス。
言葉を選ぶようにゆっくりと、ズィーリオスは話し始めた。
『あの場所にある、聖域の中で保管しているものが、原因かもしれない』
『聖域内に封印されている物が、外部へ影響を与えるなど聞いたこともないのぉ。長い時間が経っている間に、そのようなことも起こり得るようになっていたのじゃな』
『そんなバカなこと、起こり得るわけがないでしょうぉ。昔も今も異常なことよぉ!内部の一切の影響を封じ込めるために、管理者の異常なレベルの結界が必要になるんだからぁ!あなたも知っているでしょおぉ!』
『そうじゃった』
「いったい何が聖域にあるんだ?」
俺の質問は、ズィーリオス以外のこの場の全員が知りたかったことのようだ。騒がしく念話を交わしていた精霊王とヴァルードが口を噤む。
『・・・・・魔法書。魔法書があるらしい。』
実際に自分の目で確認してないからだろう、推量の形で返ってきた。それにしても、魔法書、か。聖域内にあるということは、まず、間違いなく。
「禁術か」
『禁術、と言えるだろうな。だけど、今、人の世に出ている禁術と言われるモノよりも、遥かに危険な代物だ』
考えてみればそうだ。世界で禁術と呼ばれている物は、各国が、人が決めた物だ。人が危険だと判断し、自ずと使用せずに規制を掛けたものが、聖獣たちによる封印対象にならなかったものだ。また、そこまで危険視されていない可能性もある。そんな禁術よりも、遥かに危険な代物とは一体どれ程のものなのか。
『そんなものがあの聖域にはあるのねぇ。けれどぉ、それとあの魔素濃度がどう関係するわけぇ?』
『そうじゃな。関係するようには思えぬが』
その聖域にある魔法書が、とにかく危険な物だということは分かった。しかし、関係性を見いだせない。
疑問に思う俺たちを無視し、ズィーリオスが急に立ち上がる。一瞬迷う様な素振りを見せた後、振り払う様に頭を振り、俺を見据える。
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