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精霊の格

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 今は契約が出来ないのか。質のいい媒体なんて持ってないしな。あれ?いくら合金とは言え、ミスリル合金でもかなりの質だ。低純度とは言っていたが、他の金属とは比べ物にならない素材だ。それなのに媒体になり得ない程の質とは。必要な媒体は、もっと希少金属の割合が高い物ということになる。

 精霊としての格が高いとは言っていたが、それほどの質の媒体がないと契約できないなんてどれ程の格の精霊なんだ?Bランクの魔物を瞬殺出来るほどの力を持ち、他の精霊と比べて魔力量も多いと言っていた。かなり強い精霊だということは分かる。



 精霊は強さによって格が分けられる。

 低位精霊。中位精霊。高位精霊。そして別枠で王位精霊の4つだ。基本的に、格が上がるほど保有魔力量も多く、精霊の絶対数は少なくなり、契約することも難しくなる。王位精霊だけは各属性につき1体しか存在しない。

 先ほど精霊は、他と比べて保有魔力量が多い方と言っていたことと、格の問題で希少金属の含有率が高い媒体でないと契約出来ないと言っていたことから、高位精霊だと考えられる。そして、精霊との親和性の高いエルフが住んでいる森が、精霊のいる場所なのだ。噂では、精霊は精霊の園フェアリーガーデンに住んでおり、精霊の園フェアリーガーデンがエルフの森の中にありエルフに保護されていると言われている。そして王位精霊は精霊の園フェアリーガーデンの中から出てくることはなく、人前に姿を現すことはない。高位精霊は、ごく稀にその地域を飛び出し世界を放浪することがあると言う。ダンジョンにいるとは聞いたことはないが、偶々ダンジョンに入ってきた高位精霊なのではないか?



 エルフであっても、高位精霊と契約を結べるのはごく一部の者だけ。それにも関わらず、高位精霊の方から契約を持ち込まれたのはかなり運が良かったのだ。精霊本人の望みの為、今日、明日で契約することは出来ないが、なるべく早く良い媒体となるものを手に入れたい。







「そんなに落ち込むなって。格が高いってことは高位精霊なんだろ?それに見合った良い媒体をなるべく早く見つけるからさ」





 慰める俺の言葉もあまり効果はなかったようで、首を横に振られる。存在自体がR18だろ。動作が一々エロいが、耐性が付いてきたようであまり気にならなくなってきた。というか気にしたら負けだ。





『私は高位精霊じゃないわよぉ?あれぇ?言ってなかったかしらぁ?』

「いや、聞いてないけど?高位精霊じゃないのか?」

『私は闇の精霊王よぉ?』





 暫し俺と精霊が見つめ合う。王?精霊王?王位精霊だと?そんなわけ・・・いや精霊が嘘をつくことはない。相手の嘘を見抜くことが出来る精霊は、嘘が嫌いだからこそ、自身も嘘をつくことが出来ない。その為、契約する相手を慎重に選ぶことが出来る。命を掛けられるか判断するために。







「なんでこんなところにいるんだ?精霊の園フェアリーガーデンにいるんじゃないのか?出て来ないんじゃないのか?」

『あぁー、そういうことねぇ。確かにほとんどの精霊王はぁ、精霊の園フェアリーガーデンから出てくることはないわぁ。私は知り合いから貴方のことを聞いてぇ、暇で退屈だったし出て来てみたのよぉ』







 俺のことを聞いたって誰からだよ。そもそも、そんな軽い気持ちで出てきて良いのかよ。







「王なのに出てきて良いのか?誰から俺のことを聞いたんだ?エルフの知り合いか?」

『別に王だからって特に何かすることはないから大丈夫よぉ。精霊の園フェアリーガーデンから出ちゃいけないってぇ決まりがあるわけでもないしぃ。貴方のことを聞いたのはエルフからではないから安心して良いわよぉ。貴方がここに居るってわかったからぁ、私はここに来ただけだからぁ。そのうち向こうから貴方に会いに来るだろうからねぇ。その時に分かるわぁ。うふふ』







 情報源は教えてくれないようだ。彼女の知り合いらしいし、精霊仲間かもしれないな。









『今は契約は出来ないけれどぉ、いつ契約が出来る状態になるか分からないしぃ、精霊の園フェアリーガーデンに戻っても退屈だから貴方に付いて行くことにするわねぇ。一般的なの契約でも1度契約をしてしまうとぉ、どちらかが死ぬまで契約は破棄できないからぁ、当分はこのままねぇ。貴方からの念話が使えないからぁ、他の人がいる前では気を付けてねぇ?』





 チラッとレオとシゼを見ながら、精霊王は付いて来ると言う。ズィーリオスと念話で会話が出来るし、ズィーリオスと精霊王間でも何故か念話で会話が可能なようだから、人前で精霊王と会話がしたい時は最悪ズィーリオスに頼もう。嫌がるだろうけど。







「わかった。これからよろしくな」





 そして俺は、精霊王を旅の一行に加えることとなった。









































 その後、精霊の呼び名の問題が発生したが、どこで誰が聞いているかも分からないので、精霊王だということは隠した方が良いというシゼの提案で、人前では闇の精霊と呼ぶことになった。俺たちの話を聞いていたレオとシゼには、細かな事情は話していないが相手が精霊王である為、今すぐは契約が出来ないけれど一緒に行動することになったということだけを伝えた。そしてこのことは、ここに居るメンバーだけの秘密となった。



 そして俺は今、周辺にまき散らした魔力から、この部屋の一部に気になるところを見つけたのだ。天井を見上げるが、真っ暗の闇が広がり何も見えない。しかし魔力の広がり方的には、天井付近の横の壁に穴が開いており、どうやらどこかに繋がっている様なのだ。そしてここはダンジョンで、隠し通路の先にあった隠し部屋である。あの頭上にある穴の先に、何があるのか気になって仕方ないのだ。







「どうしたんだリュゼ?」





 そんな俺を不思議に思ったのか、レオが声をかけて来る。その声に反応して、シゼも俺の視線の先に目を向けるが当然ながら何も見えるわけがなく、首を傾げていた。







「この上に通路っぽい所があるんだが、どこに繋がっているのかと思ってな」







 人差し指を立てて上を指し示す。レオも頭上を振り仰ぐが、何も見えないのが分かり直ぐ俺に顔を戻す。







「なら行ってみよう。リュゼがあるっていうならあるんだろ。俺も気になる。ズィーリオスに乗れば飛べるから上まで上がれるよな?」





 そういう反応が返って来るのは分かっていた。予想通り過ぎて驚きはない。シゼに至っては既に隣で観念していた。







『どうかしたか?』







 精霊王と何か話をしていたズィーリオスが、こちらに近づきながら話しかけて来る。事情を説明すると、なんだそういうことかと納得される。気付いていたのか?







『今、闇の精霊王とここに来た理由を話していて、外に出るために最下層まで攻略中だと説明したんだ。同じ闇だからこのダンジョン内のことは把握出来ているらしくてな、どうやら最下層まで行かなくても脱出できる場所があるらしい。それがこの頭上の通路の先らしいんだ。説明しようと思っていたが、既に通路の存在を把握していたとはな!流石リュゼだ!』







 いや!脱出できるところがあるとかは知らなかったぞ!?リタイア用の出口があったのか!?それもあんな場所に?普通気付かないし、気付いたとしても上まで上がれないだろう。高さは大体50メートルぐらいあるように感じる。本当にリタイア用だとしたら、仕方なくリタイア用の出口を作ったという様な、随分と性格がねじ曲がった奴が作ったのだろう。



 ダンジョンは誰が何の目的で作ったかはまだ解明されてないので、神の仕業だと言われているが、もしそうなら神は相当ふざけた奴に違いない。







 いくらダンジョンの構造について考えても答えなど分かるはずもないので、さっさと思考を放棄して、レオとシゼに頭上の通路の先についてズィーリオスから聞いたことを説明する。出口だと聞いた時は驚いていたが、先にネタバレをされたせいかレオが少し不服そうだ。だが、このダンジョンに来て今日で既に4日目だ。そろそろ外に出て日の光を浴びた方が良い。





 ダンジョン探索の終わりが見えたことの証だった。共にいる時間のタイムリミットが刻まれ始めたことで、レオとシゼは分かりやすく項垂れていた。
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