はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪

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初めてのダンジョン探索

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 俺のやらかしが発覚したが、冒険者にならないと入れないダンジョンに入れ、仕方なく、そう仕方なくダンジョンで過ごさないといけなくなったことによくやったと褒められた。簡単に言えば、ダンジョン探索が出来るとは思わなかったからラッキー!問題なし!といったところだ。年頃の少年だから、冒険に、それも誰の監視の目を気にせずに自由に過ごせることが嬉しいようだ。穴に落ちなかったら、直ぐにダンジョンを引き返すことが出来るわけだからな。”仕方ない”をめちゃくちゃ強調していたため、その嬉しさの度合いはかなりのものだったのだろう。

 結果良ければ全て良し。生きて脱出出来れば問題ない。







『リュゼ、ちょっといいか?』

「ズィー、どうした?」

『どうやらちょっとやばいかもしれない。だいぶ前から、周囲の気配を探ってここがどれほど下の階か調べていたのだが、感知範囲内にも関わらずこの階層しか分からないのだ』

「マジか。実は俺もだ。さらに言えば、いつもより気配の感知範囲が狭まっている気がする」







 ズィーリオスとの契約についても2人には話していたので、髪の色が変わった理由含め、能力についても話していた。だから俺が独り言を言っているという風には見られないので、普通に会話していた。それに、俺の話している内容からズィーリオスの会話内容も推測可能とシゼが判断したので、全体に伝える必要がある情報の時は、俺は声に出して話をすることが決まったのだ。そのため、俺が毟っていた羽根を自分たちが入れられていた袋に詰め込んでいた2人が、こちらに意識を向けたのがわかった。





 そしてズィーリオスの話は予想外のことだった。ズィーリオスの索敵であれば魔力による索敵になるので、その魔力の大きさからランクを推測し、地下何階層にいるのか現在地の特定を行う計画だった。シャドークロウがいることから中間層付近というおおまかな位置は推測できるが、もっと正確な位置情報が欲しかったのだ。位置情報が分かれば、上への階段を探すべきか、いっそのこと下におりてダンジョンを攻略した方がいいか決めるつもりだった。攻略をすると、ダンジョンコアのある部屋の中に、入口までの瞬間移動の出来る魔法陣があるらしいのだ。それを使って脱出する方法だ。下に降りるとしても、俺もズィーリオスも感知範囲が狭まっているのは事実なため、慎重に動いた方が良さそうだな。







「よし、なら下に降りるか」







 まるで良い子に配るプレゼントが入った袋のように、羽根が入っているのだろう袋を肩に担ぎ、腰に手を当て立ち上がるレオ。その隣には、当然とでも言いたげな表情をしたシゼが立ち、頷いている。なんで王子であるレオが持っているかは分からないけれど。



 まあ、例え現在地が上層付近でも、下に降りてダンジョン攻略をするつもりだったかもしれない。瞬間移動というダンジョンでしか見ることの出来ない仕掛けに、好奇心が刺激されてしまっている様だ。かく言う俺も、ダンジョンに来たのだから挑んでから帰りたい。遁走の花が見つかるかもしれないしな。

 こうして俺たちは脱出のために、そう、あくまで脱出のためにダンジョン攻略をすることになった。



































「僕、ダンジョン舐めてたかも」

「俺も」







 下への階段を、ズィーリオスの案内で探しながら探索すること2時間。時間感覚が全く分からなくなった真っ暗なダンジョン内で、ズィーリオスの言葉で昼休憩を取っていた。どうやら外はお昼の時間らしい。半径10メートルほどの、広めの安全な空間を見つけたのでそこで休憩中である。



 ここに至るまで、やる気満々で意気揚々と戦闘に参加していたレオとシゼだが、光球があるとはいえ、暗闇の中での2人にとっては強敵となる魔物達との戦闘は、だいぶ心身にキたようだ。

 ほとんど2人に戦闘を譲っていて、危険になった時に援護として入ったぐらいだったので、俺はたいした疲れもなく、昼食づくりに勤しんでいた。勿論、シャドークロウの肉を使った料理である。ここまでシャドークロウしか見てないので仕方ないと思うが。



 シャドークロウは、予想通り3メートルを超えるCランクのカラスの魔物だ。陰に潜み、影を操って攻撃してくるので、かなり厄介な相手である。光球から生まれる影をシゼの光魔法で打ち消して足元からの攻撃の可能性を消滅させて、レオの雷魔法と合わせて、どうにかこうにかと言ったところだ。王都近郊では滅多に現れないCランクの魔物との連戦は、2人にとってかなり良い経験となったようだ。







「これは合同訓練よりも、遥かに有意義な時間だね。こう言っちゃーなんだが、ここに来て良かった」

「そうですね。自分たちの今の実力が分かってよかったです。帰ったらもっと訓練しましょう。」

「そうだな。ま、それ以外にも仕事が山積みだけど」

「あー。そうですね。まず今回の誘拐犯は、ダンジョンを利用した犯罪に慣れている様でしたから、冒険者内部に裏ギルドの人員が紛れ込んでいるようですね。いくら意識がないとはいえ、結界内部に資格のない者を連れ込む方法があると分かっているようですし。厄介な大仕事になりそうです。一部の冒険者だけで、ギルド内部まで腐ってないといいですけどね」

「ま、裏ギルドへの取っ掛かりが見つかったんだ。大変でも慎重にやるしかないだろ」









 2人の会話をBGMに、ほとんどズィーリオスに用意してもらった調理場で、スープを作る。鶏がらで出汁を取ったスープをベースに、一口サイズに切った肉を入れ、塩胡椒で味を調えただけのシンプルなものである。このスープと乾パンが今日の昼食だ。料理器具も食器も、全て地魔法で作り出してしまうので凄い便利だ。しかし、やっぱり金属の調理器具や木の食器に比べたら使いにくいが。どうやら周りが石に囲まれているせいで、植物魔法が使えないらしい。こんなこともあるんだな、ダンジョンには。







 食後休憩を少し挟み、先に進む。休憩の間に、闇の中級ダンジョンの資料本を確認してみると、そこに載っていたマップのどれにも、今いる階層に当てはまるものがなかった。これにより、マップの存在する29階層よりは下にいるということがわかった。下に降りる方で正解だったようだ。だが、下に降りるほど階層が大きくなっているようなので、最短の道のりを取れるズィーリオスに掛かれば、上に上がる方がもしかしたら早く出れたかもしれない。













 午後以降は俺が戦闘を担当することになった。レオとシゼは疲れている様なので、ズィーリオスに乗り移動している。俺も乗りたいが、さすがに3人も乗ることは出来ない。きちんと自分の足で歩く。出てくる魔物はシャドークロウだが、陰に隠れていると言っても気配は感じるので、相手が動く前に接近し、倒しきる。暫く待つと、魔石だけを残して跡形もなく消え去る。勿論、今まで倒して来た分の魔石も回収済みだ。解体をしなければ一定時間の後に魔石だけを残して消えるのは、本の通りだった。解体をしなくていい分楽だ。マジックバッグ持ち以外にもだいぶ優しい設計の様だ。





 マジックバッグも欲しいな。そもそも今まで1つも、魔道具や武器防具の類を見つけていない。本に書いていた通りなら、10階層ごとにいるボスと、その間の5階層ごとにいる中ボスを倒した時、又は隠し部屋を見つけた時に、宝箱の中に入っているそうだ。ズィーリオスに、隠し部屋があれば報告するように言っているが、まだ何も言っていないので今のところはないのだろう。

 遁走の花らしき、白く淡く光っている花も見かけない。







 何かしら得る物が見つかればいいなと思いながら、ドンドン先に進んでいく。







「なあ、リュゼ。聞いてなかったが、ランクはいくつ何なんだ?絶対にDランクのレベルは超えているよね」





 俺の殲滅スピードに疑問を持ったのか、レオが話しかけて来る。言うよりも見せた方が早いだろうと、切ったばかりの魔物が魔石になるまでの間に、かばんからギルドカードを取り出し手渡す。



 直後、レオの手元を覗き込んだシゼと、レオの驚嘆の声が辺りに響き渡った。

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