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やらかし発覚
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穴の底には、何もないただの石の床が広がっていた。特に危険を感じなかったのでそのまま降り立つ。穴の大きさと同じく、2メートル×2メートルほどの広さがあり、そして、四方のうちの一方がどこかへ続く道となっていた。相変わらずその先は、果てがなく思えるほどの暗闇である。
気にはなるが、まずはレオとシゼの容態の確認が最優先だ。2人をそっと地面に寝かせ、きつく縛られた紐を剣で切り、それぞれの袋の口を開ける。すると見えたのはどちらも足だった。頭から袋に入れられたようだ。物資の乏しい現状で、今後この袋が使える気がするので、切り裂かずに2人を袋から出す。
目立った外傷はなく、顔色も悪くない。ただ眠っているだけのように見える。だが、長い間馬車に揺られ、担ぎ上げられ、命綱なしのバンジージャンプをしたのに目を覚まさないのはおかしい。それに呼吸が浅すぎる。強力な睡眠薬でも盛られたのかもしれない。
ズィーリオスに聖属性の解毒魔法をかけてもらう。すると、呼吸が深いものになり、気配も希薄なものではなくなった。良かった。多分、もう大丈夫だ。根拠はないがそんな確信があった。安堵感と共に、急に物凄い眠気に襲われる。あ、そうだ。今は、真夜中、頃か。
『あり、がとう。今日は、ありがとうな、ズィー』
『お疲れ。リュゼ。俺がいるから大丈夫だ。眠りな』
側に感じる暖かいもふもふとした感覚と、柔らかいズィーリオスの声に、眠気に抗うのを止めた。
強烈な殺気を感じ、飛び起きて傍らの剣を鞘から引き抜く。剣先を殺気が飛んできた方向へ向けた時には、既に殺気は何処にも感じなかった。その代わりに、殺気が放たれて来た方向である、暗闇の通路からズィーリオスがやって来る。
『あれ?起きたのか?早いな。まだそんなに時間は経ってないぞ?』
『物凄い殺気を感じたから飛び起きたんだけど』
『ああ、さっきのか。それはこいつのせいだな』
眠っているレオとシゼを起こさないように念話で会話する。あれだけの殺気で起きなければ、声に出していても起きないとは思うけど。一応念のため。ズィーリオスが顔を後方の通路の先に向けながら、光球を通路にも出してくれる。その先には、大きな黒い鳥の魔物の死体があった。どうやらこの通路は、奥に行けば行くほど拡張しているようで、体長が優に3メートル近くある魔物だ。
眠気はあるが、完全に覚醒してしまっていた。睡眠妨害の怒りを込めてその濡れ羽色の羽、毟ってやる!
毟り続けること十数分。額に浮かぶ汗を拭い、立ち上がる。ふー、やってやったぜ!
『えーっと、リュゼ?もう満足?』
『おう!満足よ!見てくれ!この見事な有様を!』
『あー、確かに見事なスキンヘッドだね。うん。やっぱりまだ正常じゃないな。リュゼ、まだ2人も起きる気配ないし、寝ときなよ。』
『いや、もう俺は目が覚め、たあぁ。』
目が覚めたと伝えようとしたが、ズィーリオスのもふもふ攻撃に抗えず、俺は撃沈した。
顔にポンポンと何かが当たる感覚がする。当たった時にガシッと抱き着いてみると、とても手触りの良い毛並みが返って来た。これはズィーリオスだな。頭が動き出したことで目が覚める。手を放し、起き上がると、レオとシゼが起きていてこちらを見ていた。
「リュゼ、起きたか」
「おはよう、兄様」
「おはよう、レオ、シゼ。ふあぁ。良かった。目を覚ましたんだ。どこか体に違和感はないか?」
「俺は特に感じないな」
「僕も何も感じないよ」
「そっか。それなら良かった」
『2人もさっき起きたばかりだ。とりあえず、食事を用意したから食べな』
『わかった』
葉っぱの上に焼かれた肉が乗せられて用意されていた。2人にも食べるように勧める。
「この葉はレチの実の葉か。それにこの肉は何だ?」
「鶏肉っぽいですね」
「葉っぱは知らないが美味しいぞ?」
葉っぱの皿を手に取り、物珍し気に眺めている2人に声をかける。もう既に食べ始めていた俺を見て、やっと食べ始める。お!お気に召したようだ。無言で食べ進めている。にしても確かにこの肉、美味しいな。
『なあ、ズィー。この肉ってあの真っ黒い羽根の、鳥の魔物の肉か?』
『そうだ。リュゼが一生懸命羽根を毟っていた奴と同じ種類だ。こいつら結構いるみたいだから、リュゼが毟っていた奴は俺が食べたぞ』
『そうなのか』
『あと、あそこに毟っていた羽根は取って置いているから』
ズィーリオスが示した先には、黒い羽根が重ねられて置かれていた。そこから2枚取って来て、1枚ずつレオとシゼに渡す。
「これが今食べている奴の羽根だ」
「これってまさか!」
「凄い。実物は初めて見ました」
「どうしたんだ?」
羽根を見て驚く2人。そんなに凄いものなのか?
「この羽根って、シャドークロウという魔物の羽根だよ、兄様。これ1枚で小金貨1枚の価値があるんだ。この質のものは簡単には手に入らないから貴重で。って聞いてる?」
「あ、ああ。勿論だ。」
マジか。たった1枚で小金貨1枚分。日本円で10万円。体全ての羽根で一体いくらに?
「特にこの羽根は頭部のものだろう?これが1番価値が高いんだ。シャドークロウの羽の艶は健康体の証で、初撃を受けた直後から頭部の羽から艶が失われていくからな。」
えーっと。禿にして良かったのかもしれない。他の素材より場所は取らないし。お金はいくらあっても困らないからな!見つけ次第、禿にしてやろう!はっはっはっ!
「兄様?」
「気にするな。なんでもない」
気付けば皆の食事が終わっていた。そしてレオとシゼが、俺と先ほどから俺の後方で寝そべっているズィーリオスに視線を向ける。
「お前の相棒を紹介してもらおうか。それと、この状況についてもな」
「わかった」
最初からそのつもりだったので頷く。ただ、ズィーリオスの説明はどうしよう。どうせダンジョンでの戦闘で色々見られるし、もしもの時のために知っておいてもらった方がいいかもな。2人は信じるって決めたし。というか、エレメンタルウルフって嘘ついた方がなんかバレそうだし。うん、そうしよう。この状況に至った原因は、王都での邂逅から話せばいいか。
最初から1つずつ説明していく。ズィーリオスが聖獣だと言った時は、さすがの2人でも驚愕し過ぎて暫く固まっていた。そして、1度見た属性は習得出来るというチートさには開いた口が塞がっていなかった。その開いた口に、レオの方に先ほどの羽根を突っ込もうとしたら、ズィーリオスの尻尾で叩き落とされた。酷い。口が開いたままだと何か突っ込みたくなるじゃないか!え?分からない?
その後属性の習得の話の流れで、まだ水属性を覚えていないという話になった時、レオが実際に手のひらに水を出して見せてくれた。ズィーリオスは地魔法でコップを作り出し、早速その中に水を出して見せて、習得したことが認識出来たようだ。水は何度か出してもらい、皆で美味しく頂いた。ダンジョンという水の確保が難しい場所で、水の確保が容易になったのはかなり生存確率が上がっただろう。
「それにしてもリュゼさ、わざわざスティピードの3人が、俺たちを落とし穴に入れるのを待つ必要なかったよね?袋の中から人の気配がしていたんでしょ?ならその時点で、人攫い確定の罪人なんだから、殺してもよかったんじゃないか?」
「あっ」
「それにダンジョン内部が無法地帯になっているからこそ、罪が確定する前に殺してしまっても、証拠はダンジョンに消えてしまうから冒険者ギルドにバレることはないし、ギルド追放にならないよ。兄様」
「この死体諸共消えるというダンジョンの性質を利用して、敵は俺たちを綺麗に殺そうとしていたんだろ。ならそいつらだって同様で、反撃されて死んだとしてもどうこう言えないしな。俺ら、ここに来る必要なかったんじゃないか?」
「・・・・・すみませんでした」
今更、起きたことに対して変えることは出来ないけど、今後はもっといろんな視点から物事を考え、視野を狭めないようにしようと誓うのだった。
気にはなるが、まずはレオとシゼの容態の確認が最優先だ。2人をそっと地面に寝かせ、きつく縛られた紐を剣で切り、それぞれの袋の口を開ける。すると見えたのはどちらも足だった。頭から袋に入れられたようだ。物資の乏しい現状で、今後この袋が使える気がするので、切り裂かずに2人を袋から出す。
目立った外傷はなく、顔色も悪くない。ただ眠っているだけのように見える。だが、長い間馬車に揺られ、担ぎ上げられ、命綱なしのバンジージャンプをしたのに目を覚まさないのはおかしい。それに呼吸が浅すぎる。強力な睡眠薬でも盛られたのかもしれない。
ズィーリオスに聖属性の解毒魔法をかけてもらう。すると、呼吸が深いものになり、気配も希薄なものではなくなった。良かった。多分、もう大丈夫だ。根拠はないがそんな確信があった。安堵感と共に、急に物凄い眠気に襲われる。あ、そうだ。今は、真夜中、頃か。
『あり、がとう。今日は、ありがとうな、ズィー』
『お疲れ。リュゼ。俺がいるから大丈夫だ。眠りな』
側に感じる暖かいもふもふとした感覚と、柔らかいズィーリオスの声に、眠気に抗うのを止めた。
強烈な殺気を感じ、飛び起きて傍らの剣を鞘から引き抜く。剣先を殺気が飛んできた方向へ向けた時には、既に殺気は何処にも感じなかった。その代わりに、殺気が放たれて来た方向である、暗闇の通路からズィーリオスがやって来る。
『あれ?起きたのか?早いな。まだそんなに時間は経ってないぞ?』
『物凄い殺気を感じたから飛び起きたんだけど』
『ああ、さっきのか。それはこいつのせいだな』
眠っているレオとシゼを起こさないように念話で会話する。あれだけの殺気で起きなければ、声に出していても起きないとは思うけど。一応念のため。ズィーリオスが顔を後方の通路の先に向けながら、光球を通路にも出してくれる。その先には、大きな黒い鳥の魔物の死体があった。どうやらこの通路は、奥に行けば行くほど拡張しているようで、体長が優に3メートル近くある魔物だ。
眠気はあるが、完全に覚醒してしまっていた。睡眠妨害の怒りを込めてその濡れ羽色の羽、毟ってやる!
毟り続けること十数分。額に浮かぶ汗を拭い、立ち上がる。ふー、やってやったぜ!
『えーっと、リュゼ?もう満足?』
『おう!満足よ!見てくれ!この見事な有様を!』
『あー、確かに見事なスキンヘッドだね。うん。やっぱりまだ正常じゃないな。リュゼ、まだ2人も起きる気配ないし、寝ときなよ。』
『いや、もう俺は目が覚め、たあぁ。』
目が覚めたと伝えようとしたが、ズィーリオスのもふもふ攻撃に抗えず、俺は撃沈した。
顔にポンポンと何かが当たる感覚がする。当たった時にガシッと抱き着いてみると、とても手触りの良い毛並みが返って来た。これはズィーリオスだな。頭が動き出したことで目が覚める。手を放し、起き上がると、レオとシゼが起きていてこちらを見ていた。
「リュゼ、起きたか」
「おはよう、兄様」
「おはよう、レオ、シゼ。ふあぁ。良かった。目を覚ましたんだ。どこか体に違和感はないか?」
「俺は特に感じないな」
「僕も何も感じないよ」
「そっか。それなら良かった」
『2人もさっき起きたばかりだ。とりあえず、食事を用意したから食べな』
『わかった』
葉っぱの上に焼かれた肉が乗せられて用意されていた。2人にも食べるように勧める。
「この葉はレチの実の葉か。それにこの肉は何だ?」
「鶏肉っぽいですね」
「葉っぱは知らないが美味しいぞ?」
葉っぱの皿を手に取り、物珍し気に眺めている2人に声をかける。もう既に食べ始めていた俺を見て、やっと食べ始める。お!お気に召したようだ。無言で食べ進めている。にしても確かにこの肉、美味しいな。
『なあ、ズィー。この肉ってあの真っ黒い羽根の、鳥の魔物の肉か?』
『そうだ。リュゼが一生懸命羽根を毟っていた奴と同じ種類だ。こいつら結構いるみたいだから、リュゼが毟っていた奴は俺が食べたぞ』
『そうなのか』
『あと、あそこに毟っていた羽根は取って置いているから』
ズィーリオスが示した先には、黒い羽根が重ねられて置かれていた。そこから2枚取って来て、1枚ずつレオとシゼに渡す。
「これが今食べている奴の羽根だ」
「これってまさか!」
「凄い。実物は初めて見ました」
「どうしたんだ?」
羽根を見て驚く2人。そんなに凄いものなのか?
「この羽根って、シャドークロウという魔物の羽根だよ、兄様。これ1枚で小金貨1枚の価値があるんだ。この質のものは簡単には手に入らないから貴重で。って聞いてる?」
「あ、ああ。勿論だ。」
マジか。たった1枚で小金貨1枚分。日本円で10万円。体全ての羽根で一体いくらに?
「特にこの羽根は頭部のものだろう?これが1番価値が高いんだ。シャドークロウの羽の艶は健康体の証で、初撃を受けた直後から頭部の羽から艶が失われていくからな。」
えーっと。禿にして良かったのかもしれない。他の素材より場所は取らないし。お金はいくらあっても困らないからな!見つけ次第、禿にしてやろう!はっはっはっ!
「兄様?」
「気にするな。なんでもない」
気付けば皆の食事が終わっていた。そしてレオとシゼが、俺と先ほどから俺の後方で寝そべっているズィーリオスに視線を向ける。
「お前の相棒を紹介してもらおうか。それと、この状況についてもな」
「わかった」
最初からそのつもりだったので頷く。ただ、ズィーリオスの説明はどうしよう。どうせダンジョンでの戦闘で色々見られるし、もしもの時のために知っておいてもらった方がいいかもな。2人は信じるって決めたし。というか、エレメンタルウルフって嘘ついた方がなんかバレそうだし。うん、そうしよう。この状況に至った原因は、王都での邂逅から話せばいいか。
最初から1つずつ説明していく。ズィーリオスが聖獣だと言った時は、さすがの2人でも驚愕し過ぎて暫く固まっていた。そして、1度見た属性は習得出来るというチートさには開いた口が塞がっていなかった。その開いた口に、レオの方に先ほどの羽根を突っ込もうとしたら、ズィーリオスの尻尾で叩き落とされた。酷い。口が開いたままだと何か突っ込みたくなるじゃないか!え?分からない?
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「それにしてもリュゼさ、わざわざスティピードの3人が、俺たちを落とし穴に入れるのを待つ必要なかったよね?袋の中から人の気配がしていたんでしょ?ならその時点で、人攫い確定の罪人なんだから、殺してもよかったんじゃないか?」
「あっ」
「それにダンジョン内部が無法地帯になっているからこそ、罪が確定する前に殺してしまっても、証拠はダンジョンに消えてしまうから冒険者ギルドにバレることはないし、ギルド追放にならないよ。兄様」
「この死体諸共消えるというダンジョンの性質を利用して、敵は俺たちを綺麗に殺そうとしていたんだろ。ならそいつらだって同様で、反撃されて死んだとしてもどうこう言えないしな。俺ら、ここに来る必要なかったんじゃないか?」
「・・・・・すみませんでした」
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