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判定の儀1

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 皆様、おはようございます。本日は澄み渡る青空に、暖かな陽気に包まれた、絶好の儀式日和でございます。判定の儀はお昼過ぎからですが、現在、邸宅内は朝から騒がしいです。儀式の会場は、この邸宅から王城を挟んで反対側、王都内の王城から少し離れた場所に位置する教会です。





 邸宅の位置としては、王都に隣接する東側の、バルネリア公爵領のさらに東の端に位置しております。

 すぐ隣は、世界にいくつか存在する魔境の一つ、ではない普通の森が広がっています。森の外周部は、ほとんど魔物がいませんが、森の中にある崖に区切られたその内心部では、多くの魔物が跋扈する地帯となっています。飛行系の魔物が、たまに外周部に姿を現すことがありますが、崖を登って来る魔物はほとんどいませんので、バルネリア家の良い訓練場所として使われています。

 勿論それだけではなく、もしも、大量の魔物が現れてしまった時の、王都の防波堤も担っております。そのような場所にあるため、教会までの移動に時間がかかるので、午前中には出発しないといけません。そのための準備が行われているのです。家族全員で向かうそうです。皆の準備は出来ているので、あとは出発準備が出来次第向かいます。予定では、そろそろ準備が終わるはずです。ですので、姉様。そろそろ私を放してくれないでしょうか。ダメですか。そうですか・・・。











 準備が出来たという報告が来たので、現実逃避はここまでにしよう。同じ部屋にいた、母様、姉様、シゼと共に玄関へ向かい、外に出る。そこには、左右に分かれて並んだ、多くの使用人達の姿があった。その奥には馬車が見え、その周辺にも使用人達の姿がある。ほぼ全員いるのではないだろうか。







 ここの使用人には、色々な種族の者がいる。この国は、人間至上主義の国ではなく、多種族国家であった。

 この邸宅内で働く者だけでも、亜人と呼ばれるヒト種である、人間、エルフ、獣人、ドワーフがいる。しかし、エルフだけは希少種族と呼ばれるほど、絶対数が圧倒的に少なく、かつ、自分たちの国から出る者は少ないため、1人しかいない。その人は、長年この家に仕えてきていて、歴代の当主の補佐をしている。だからあまり会ったことはない。男性のはずだが、女性とも思えるほどの美しい容姿であったのは覚えている。見た目年齢は、20代後半なのに、お爺様や師匠の子どもの頃から仕えていたらしい。長命種だなーと感じた瞬間だ。

 ドワーフも、人間や獣人に比べたら長命であるが、やはりエルフには及ばない。そして、かなり偏屈な性格の者が多いため、本来このような場所で働いているのは珍しい。と言っても、仕えているのは3人だけだ。

 聞いた話では3つ子の様だ。2人は侍女として働いていて、それぞれ、裁縫担当、洗濯物担当で、もう1人が厨房で働いている。

 獣人は、さまざまな種族の者がいて、使用人全体の3割ほどだ。人間は約6割ほど、残り1割はエルフ、ドワーフといった感じだ。





 馬車の近くに来た時、父様と兄様達が姿を見せ、早足に近づいてきた。









「4人とも待たせたな。ルーデリオ。今日は、お前の記念すべき日となるだろう。バルネリア家の者として、堂々としてろ。いいな?」

「はい!」







 微笑を浮かべながら、軽く頭を撫でられる。やはり、今世の両親は優しい。母様に、体の向きを邸宅の方に優しく向けられる。何だろうか?振り返って見上げると、柔らかな笑みを浮かべたまま頷く。うん?うーん。あっ、もしかして。







「行ってきます!」







 使用人たちの返事が返ってくる。これでいいのだろうか。母様を見上げると、良く出来たわね、という表情で頭を撫でられる。これで良かったようだ。



 父様が、エルフの補佐の人に何かを言った後、移動に付いてくる使用人達に声をかけた。そして私たちは、馬車へと乗り込み出発したのだった。



































 気まずい。非常に気まずい。

 馬車の搭乗人数の問題で、バルネリア家は2つの馬車に分かれて乗っていた。私の前には父様が座っており、その隣に母様。私の隣にロベルト兄様が座っている。ロベルト兄様とは、きちんとした会話を交わしたことなどほとんどないのに。チラッと兄様の顔を見る。うーん、やっぱりイケメンだな。でもそれだけしか思えないんだよな。中身は女のはずなのに。やはり兄だからだろうか。うーん。







「何だ。」

「へっ?」

「さっきからずっと見ているだろ。」







 気付かないうちに、ずっと見つめてしまっていたようだ。怒っているのかな?とりあえず謝ろう。







「ロベルト兄様。すみません。なんでもないです。」

「あら。もしかして、ルーちゃんはロベルトが気になるんじゃないかしら。普段はあまり関わることがないもの。」







 母様の言ってる通りなのか、という目で兄様が見る。確かに気になってはいる。いつも何を考えているかわからないのだ。これは兄様のことを知るチャンスかもしれない!







「えーっと。はい。ロベルト兄様に興味があります。」

「そうか。私は興味ない。」







 ちょっ!ちょっと待って!会話終了!?

 唖然として兄様を見つめるが、本当にどうでもいいのか、顔を反対に向けた。そんな私達のやり取りを見た父様が、誰に対しても同じだから気にするな、とフォローを入れるが、次期公爵家当主として良いのだろうか。

 まあ、確かに気にしてもしょうがないので、今向かっている教会について、以前勉強した内容を思いだす。







 会場となる教会は、九元教と呼ばれる、この国の国教となっている宗教だ。九元教は、9つの属性を生み出したと言われるラドニア神を主神としている。トップの教皇と、9人の大司教を中心とし、世界中に広がっている一大勢力だ。教皇を国王としたラドニア神聖国を聖地とし、世界各地に教会を作り、布教活動を行っている。世界中に信徒は現在、数千万人ほどいると言われている。毎年、世界各地の信者が聖地巡礼として訪れるため、聖都は経済発展が著しい。





 国が国教としているだけで、私は信仰していない。転生した立場としての、テンプレよろしく神との対面はなかったので、神はいるのかもしれないが、はっきりと断言はできない。ただ、信仰していないと周りには言っていない。面倒なことになりそうだからだ。わざわざ言う必要はないだろう。





 お昼時になり、進行上の宿場町で休憩を挟み、再び王都に向けて馬車に乗り込む。窓から降り注ぐ暖かな日差しに、満腹感と馬車の揺れからくる睡魔に耐え切れず、意識を手放した。





















 僅かに聞こえてくる母様の声で、目が覚める。着いたようだ。父様たちに続いて馬車を降りる。

 そこには多くの上位貴族たちが集まっていた。この世界に転生して、初めて見る人の多さだった。周りから私に向けられる多くの視線が、嫌でも貴族たちの興味を引いているのが分かる。すごく居心地が悪いが、出発前に父様に言われたことを思い出し、何とか耐える。ふう、シゼを見てたら落ち着いてきた。







 すると中から、チュニックに頭巾付きの修道着を着た修道士がやってきて、私達を中に案内する。奥の方には低い台座があり、そこが見えるようにいくつもの椅子が配置されていた。前から2番目の席がバルネリア家の場所らしい。どんどん他の貴族たちも席へと案内されていく。







 ふと、後方から視線を感じて振り返ると、後ろ側の席に師匠の姿が見えた。お孫さんと、その両親らしき人と一緒にいるのが見える。とりあえず軽く挨拶しておく。軽く手を挙げて返答されたので大丈夫だろう。

 急にざわめきが静まる。何事かと思えば、王族が到着したようだ。綺麗な水色の髪を編み込み、1つにまとめ横に流した、レオと同じ瞳の美女が入ってきた。レオの母親である、王妃様だ。その後ろにレオの姿が見える。

 2人は私たちの前を通り過ぎ、1番前の席に座る。通り過ぎる途中、レオと目が合ったので目線で挨拶しておく。・・・きっと伝わっているだろう。











 2人が着席したのを確認し、ハーデル地域統括司教と名乗る男性が前に立った。そしてそのまま、判定の儀の開始を宣言するのだった。
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