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「特徴か……。白銀の髪を美しく結い上げた、青い瞳のご令嬢だ。確かグリーンのドレスを着ていた」
 白銀の髪に青い瞳か……。ゼノンは記憶を掘り起こし考え込む。そんなご令嬢いただろうか? この国の人間で青い瞳は珍しくもないし、白銀は少々珍しいかもしれないが、個人を特定できるほどの希少さでもない。グリーンのドレスは思い出すだけでも数人はいた。
「ご令嬢もいたのならば覚えているだろう。あの日、布袋を握りしめ母親の誕生日プレゼントを買いに少女が来ていたことを」
 もちろん、そのことはアナスタシアもゼノンも覚えている。忘れられるはずがない。あの少女の純粋で清らかな心と、恰好だけで判断して嫌悪と悲鳴を上げた貴婦人たちの姿を。
「皆がその少女を邪険に扱ったが、彼女は違った。躊躇いもなく少女に近づき、一緒に商品を見て、自分の財布から両替までしてあげていた」

 …………ん?

 思い出すように瞼を閉じて語る王子に、ゼノンは大きく首を傾げた。
 白銀の髪に、青い瞳。グリーンのドレスを着て、少女と一緒に商品を選び、自分の財布で両替――なんだかすごく覚えのある言葉ばかりだ。
 嫌な予感がする。ゼノンのこめかみに汗がつたった。しかしゼノンの姿さえボンヤリとでしか認識できないこの状況で王子がそれに気づくはずもなく、ついに決定的な言葉を告げた。
「私が探しているのは、少女が去った後に名前を聞いたご令嬢だ。彼女は何を思ったのか、名前ではなく〝この世のものではございません〟と言って馬車に乗り込み、走り去ってしまったが」
 プリスカの店に行く貴婦人は多い。青い瞳はもちろん、白銀の髪にグリーンのドレスを纏う者もそれなりにいるだろう。だが、そのすべての条件に当てはまり、なおかつ王子自らに名前を尋ねられて〝この世の者ではございません〟などと答え勢いよく馬車に乗り込み去った者など、一人しかおるまい。
(王子……残念ながらそれ、僕です……)
 しかしそんなこと言えるはずもない。王子は真剣に相手を女性だと思っているのだから。
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