必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「き、きさまぁッッ!! よくも若君をッッ!!」
 異常なほど静かに話す紫呉に、ようやく我に返ったのだろう兵の一人が叫ぶ。怒りゆえか、それとも恐怖ゆえか、ガタガタと小さく揺れる切っ先を向ける彼に紫呉はツイと視線を向けた。
「よくも? 何を言ってやがる。お前らは俺らを奇襲して殺そうとしてたんだろ? そこに倒れてる坊ちゃんは何の罪もない、多くは戦う術も持たない丸腰の者たちを切り殺すことに賛同し、動いたんだろ? そんなことをしておきながら自分だけは正々堂々と名乗って勝負されて当たり前ってか? 自分だけは殺されないってか? んなわけねぇだろ。それとも、この坊ちゃんも、お前らも、覚悟も無しにあいつらを手にかけ、俺たちを殺そうとここまで集まってきたのか?」
 ゆったりと構える紫呉は、しかし隙など僅かも無い。いつ彼がもつ槍が襲い掛かってくるかわからぬ恐怖に、私兵らは背を僅かに震わせた。
 覚悟。彼は確かに覚悟と言った。そんなものは、武人として織戸築に仕えると決めてからずっと持っている。持っていたはずだ。だというのに、紫呉の視線を前に、どうしてか心は揺らぐ。
 本当に自分は、己がいつか殺されるかもしれないという覚悟をしていたのだろうか?
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