必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「ぐッッ――」
 呼吸をする度に口から鮮血が吐き出される。私兵に守られていたはずの彼に起こったそれに、誰もが背筋を凍らせ、身動き一つできなかった。
 地面に転がっているのは何だ。身に纏っているのは光明を守っていたはずの私兵の物ではなかったか?
「目的のためなら手段を択ばねぇのは、何もお前らだけじゃねぇんだよ」
 光明の心臓を正確に貫いた刃を引き抜く紫呉の姿に、周りにいた私兵たちは思わず一歩、一歩と後退った。ドサリと、支えを失った光明の身体が地に倒れ伏す。
「俺は馬鹿だがな、何もわからねぇほど間抜けでもないつもりだ。お前らは国のため、無辜の民のため、そう言って血を流すことも厭わねぇ。それが自分の血なら、なんと高潔なと言ってやったさ。だが、お前が流した血はお前のでも、お前の大切な者のでもねぇ。俺の大切な者の血だ」
 由弦と蒼は切り殺されたと言っていた。周も刃で貫かれ、雪也は服毒。最期の時、彼らは何を思っただろう。痛かっただろうか、怖かっただろうか。何を知ることもできない紫呉にできるのは、せめて彼らの苦しみが少なかったことを祈ることくらいだろう。
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