必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「……気持ちは痛いほど理解しましょう。ですが、ここは危険です。ましてあなたは頻繁にこの庵を出入りしていた。周さんさえ手にかけるような者達です。ここに住んでいないとはいえ、あなたが狙われていないとは限らない。庵から離れ、なるべく一人にならないようにした方が良い。一緒に、帰りましょう」
 彼らが何を思って雪也達を襲撃したのか、男にも正確な事はわからない。だが、弥生に深く関わっている者を消し去ろうという考えならば、標的の中に湊がいてもおかしくは無いだろう。彼らは弥生達の愛し子だ。確かに、弥生の勢いを削ぐという意味ではこれ以上ないほどの正解だ――反吐が出るほどに。
「サクラ、一緒に行きましょう」
 男が声をかけるが、サクラは耳をピクリと動かしただけで顔を上げようともしない。スリスリと由弦に頭をすり寄せ離れないその姿に引き離すのは憐れに思えて、男は着ていた羽織を脱ぐとサクラの姿を隠すように被せた。少しの間であれば、これで難は逃れられるはず。
 次いで蒼を運ぶために手を伸ばした時、そっと男の手を湊が遮った。視線を向ければ、輝く髪に瞳を隠すように湊が俯いている。
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