必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 このまま道理も知らぬ若造らに好き勝手されるのを黙って受け入れろと言うのか。
 そう叫んだのは誰だったか。しかし、衛府の一室に集まった者達は皆、同じように憤った顔をして頷いていた。
 このままではいけない。
 このままでは衛府の威信にかかわる。
 身の程を思い知らせてやって何が悪いのか。
 手を出すなとは、上様は我々にただ黙って殺されろと申されるか。
 やはり華都贔屓の芳次殿を将軍にしたのは間違いだったのでは?
「静まられよ」
 ザワザワと騒めきに満ちていたその場が、上座に座っていた壮年の一言によって静まり返る。皆の視線を受けて、壮年の男は小さく息をついた。
「将軍位のことを今言い争ったところで始まらぬ。そうではござらんか? 我々が早急に対処すべきは、尊皇を掲げる愚劣な者たちの暴挙だ。あ奴らを野放しにしておいては、将軍を諫めるにせよ替えるにせよ、その前に切り捨てられているだろう」
 前将軍の忘れ形見である鶴頼はまだ幼く、とうてい自らで政を行うことはできない。幼ければそれだけ近臣に都合よく動かし、傀儡とすることもできるだろうが、そうなれば特定の近臣が将軍以上の権力を持ち、引きずり降ろそうとしてもその幼さゆえに将軍が全力で守ってしまうだろう。それは衛府がもつ歴史が如実に物語っている。
 あのような悪臣が再び出てきてしまうくらいならば、別の成人した者を将軍にした方が近臣にとって都合がよい。とはいえ、芳次以外に身分の上で適任もそう思い浮かばなかった。
 芳次を説得して近臣が願う通りに動かすにも、芳次を退けて別の者を将軍にするにも時間がかかる。一日二日で成せるほど簡単なものではない。
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