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「サクラ? なんでここに……」
「んー、買い物きたら急に走っていったから?」
ポツリと無意識に零れ落ちたその呟きに応えが返ってきて、湊はガバリと勢いよく振り返った。そこには苦笑しながら頭を掻いている由弦と、追いかけて来たのだろう、こちらに歩いてくる雪也と周の姿があった。
「湊を見つけたのか。もぉー、サクラー。嬉しいのはわかるけど、急に走ってったらビックリするだろー?」
ポカンとする湊を他所に、由弦はサクラを抱き上げて軽く叱るが、サクラはそれさえも遊んでもらっていると思っているのだろう、キャッキャと楽しそうに笑みを浮かべるばかりだ。
「これ絶対わかってないよなぁ」
ウリャウリャ! と抱き上げたままサクラの脇をこそばせる由弦と、心底楽しそうなサクラに苦笑して、ようやく追いついた雪也が美しい所作で湊の前にしゃがみ込む。急なことで反応することができない湊に優しく微笑んだ。
「少し顔色が悪いけど、大丈夫? 貧血なら、手持ちの薬が少しあるけれど」
しゃがみ込んで膝に顔を埋めていたため勘違いをしたのだろう。雪也が熱を測ろうと手を伸ばすのに、首を横に振って否定する。
「貧血でも体調が悪いわけでもないから大丈夫。変なところ見せちゃって、心配かけてごめん」
大丈夫だから、と繰り返して立ち上がる。本当は身体がひどく重いが、このまま座り込んでいては雪也達にあらぬ心配をかけてしまうだろう。
「んー、買い物きたら急に走っていったから?」
ポツリと無意識に零れ落ちたその呟きに応えが返ってきて、湊はガバリと勢いよく振り返った。そこには苦笑しながら頭を掻いている由弦と、追いかけて来たのだろう、こちらに歩いてくる雪也と周の姿があった。
「湊を見つけたのか。もぉー、サクラー。嬉しいのはわかるけど、急に走ってったらビックリするだろー?」
ポカンとする湊を他所に、由弦はサクラを抱き上げて軽く叱るが、サクラはそれさえも遊んでもらっていると思っているのだろう、キャッキャと楽しそうに笑みを浮かべるばかりだ。
「これ絶対わかってないよなぁ」
ウリャウリャ! と抱き上げたままサクラの脇をこそばせる由弦と、心底楽しそうなサクラに苦笑して、ようやく追いついた雪也が美しい所作で湊の前にしゃがみ込む。急なことで反応することができない湊に優しく微笑んだ。
「少し顔色が悪いけど、大丈夫? 貧血なら、手持ちの薬が少しあるけれど」
しゃがみ込んで膝に顔を埋めていたため勘違いをしたのだろう。雪也が熱を測ろうと手を伸ばすのに、首を横に振って否定する。
「貧血でも体調が悪いわけでもないから大丈夫。変なところ見せちゃって、心配かけてごめん」
大丈夫だから、と繰り返して立ち上がる。本当は身体がひどく重いが、このまま座り込んでいては雪也達にあらぬ心配をかけてしまうだろう。
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