必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「今、武衛はどんな感じだ? 父上や雪也たちは息災だろうか」
 父は護衛である春風の私兵が護ってくれているだろうが、月路がここにいる以上、雪也たちは自分の身を自分で守るしかない。せめて何事もなければと願うが、弥生の願いに反して月路は瞼を伏せた。
「表面上は穏やかな日常が流れていますが、相変わらず近臣への襲撃は続いています。また、近臣の方たちも限界寸前のようで、上様に連日、報復をすべきだと訴えているようです。同時に、衛府を見限った近臣が両手では数えきれないほど影で尊皇派に接触し、衛府の情報を彼らに流しているようです。表面上は上様に服従していますが、衛府で行われる会話はほぼすべて尊皇派に筒抜けになっていると考えて良いでしょう。庵の方も普段と変わりなく、と思いたいのですが、尊皇派の怪我人も何人か薬や処置を求めてやって来ています。彼らが間者ではない、と断言はできません」
 もはや誰を見ても怪しい。衛府の近臣であっても信用ならないとあれば、安心などどこにもない。
「月路、少し休んだら武衛に戻れ。庵を――あの子たちを頼む」
 本当は弥生たちが誰よりも真っ先に武衛に駆け、雪也たちを守ってやりたい。この目で無事を確かめ、この腕で敵を薙ぎ払ってやりたい。だが、今の弥生にそれは許されない。
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