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「過激派が次の満月の夜に武衛にある近臣の屋敷に火をかけ、混乱に乗じて手薄になった衛府を砲撃するとの情報を得ました。火薬を中心に米なども集められていることから情報は信憑性があると判断され、殿がすぐに若様にお伝えするようにと」
 砲撃とはまた物騒だが、火薬が集められているとなると質の悪い冗談と流すわけにもいかない。米も集められているということは、本格的に戦の準備を始めているということか。
「事は一刻を争う、か」
「それにしても砲撃とはね。素人がやろうと思って扱えるほど大砲は容易いものではないから、その情報が本当であるなら、やっぱり裏にいるのは織戸築かな」
 小さくため息をついた弥生に、優が苦笑しながら続ける。春風に仕える隠密たちは人数こそ少ないが情報の正確さは衛府の諜報に引けを取らない。織戸築の光明が過激派の者に近づいたことは早々に耳に入っていた。知ったところで、杜環が倒れ、春風の当主と仲の良い織戸築当主も臥せっている現状ではできることなどほとんどないのだが。
「火急で私にそれを知らせて来たということは、父上の方もさほど良い結果にはならなかったようだな」
 せめて、と春風当主が織戸築に文を送っていたが、すべては遅かったのだろう。もはや戦が始まるも止めるも弥生の動き次第。覚悟していたとはいえ、この肩にのしかかるものがあまりに重すぎて次々とため息が零れ落ちた。そんな弥生の背をポンポンと優が撫でる。
 背に感じる温もりに胸が少し軽くなって、弥生は柔らかい視線を月路に向けた。
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