必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

文字の大きさ
上 下
576 / 714

574

しおりを挟む
「我々のことはお気になさらず。兄さまたちが庵に来るときには変装してくれていましたから、完全に安全だなどとは言いませんが、優先すべきは庵ではなくお屋敷や兄さまです。何のために武衛を出られたのか、兄さまが説明されなかったことを無理に聞こうだなどとは思いません。言わないということは、それなりの理由があるのでしょう。しかし私も、こんな時に、よりにもよって兄さまが武衛を離れたことに関して何も感じないわけではありません。私の予想が正しいのであれば、この情報は一刻も早く兄さまに届ける必要があるでしょう」
 どうか行ってください、と言われては月路もそれ以上を言うことはできない。雪也よりも弥生の今を知る月路としては、雪也の言う通り庵よりも何よりも弥生を優先させる事態だと理解しているからだ。この物騒な話は今すぐにでも情報を精査して春風家当主と弥生に伝えるべきだろう。
「わかった。では俺は情報を調べて主の元へ向かうから、数日はお前たちの側を離れる。わかっているだろうが、充分に気をつけろ」
 雪也達のことは気にかかる。弥生達も雪也達を守れと月路に命じた。しかし、いま月路が動かなければ武衛も衛府も地獄に変わるだろう。優先させるべきは何か、誰の目にも明らかだ。
 恭順を示すためとはいえ、今日ほど春風が少数精鋭であることを恨んだことはないかもしれない。消すことのできぬ心配を胸の内に押し隠して、月路は出て来た時と同じように音もなく姿を消した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今世では誰かに手を取って貰いたい

朝山みどり
BL
ノエル・レイフォードは魔力がないと言うことで、家族や使用人から蔑まれて暮らしていた。 ある日、妹のプリシラに突き飛ばされて、頭を打ち前世のことを思い出し、魔法を使えるようになった。 ただ、戦争の英雄だった前世とは持っている魔法が違っていた。 そんなある日、喧嘩した国同士で、結婚式をあげるように帝国の王妃が命令をだした。 選ばれたノエルは敵国へ旅立った。そこで待っていた男とその日のうちに婚姻した。思いがけず男は優しかった。 だが、男は翌朝、隣国との国境紛争を解決しようと家を出た。 男がいなくなった途端、ノエルは冷遇された。覚悟していたノエルは耐えられたが、とんでもないことを知らされて逃げ出した。

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒
BL
 目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

うまく笑えない君へと捧ぐ

西友
BL
 本編+おまけ話、完結です。  ありがとうございました!  中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。  一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。  ──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。  もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

処理中です...