必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「じゃ、僕は庵に行くから、あとはよろしくね~。もう帳簿変なことしないでよ!」
 約束通り蒼の店まで送ってくれた兵衛と別れれば、蒼と湊が勢いよく籠を背負って中にいるのだろう蒼の父に叫ぶように言ってから出て来た。何かあったのか? と苦笑しつつ、何も言わずに庵へ向かう。道中で必要な食材を買いつつ庵に戻れば、蒼と湊が籠を置いた瞬間に周りを確かめ、雪也を手招いた。
「ちょっと、気になることがあってね~」
「噂だから、正確性はわかんないんだけど」
 そう前置きして湊は蒼の店先で耳にした火薬の盗難や米蔵が狙われているという噂を雪也に耳打ちした。噂とはいえあまりに物騒なそれに、先程の食事処で盗み聞きした会話も相まって、自然と眉間に皺が寄る。
「……少しだけ、ここに居てもらって良い? 庭の方に行ってくる」
 常であれば例え庭であったとしても一人は危険だとついて行くのだが、雪也が何をするのか何となく理解して頷くにとどめ、庵を出ようとする彼に慌てる周と由弦を宥めるに徹した。
 そんな蒼と湊に胸の内で礼を言って、雪也は静かに庭へ向かう。庵の影に隠れる場所で薬草を見るフリをしてしゃがみ込む。
「いらっしゃいますよね?」
 吹き抜ける風に紛れるほどの小さな声であったが、流石は春風家に仕える者というべきか。音もなく雪也の隣に月路が姿を現した。
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