必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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(できれば行きたいんだけどね)
 弥生達が行ってしまってから雪也も寂しそうだし、おそらく紫呉と恋仲になっているのであろう由弦は目に見えてションボリとしている。それにつられてサクラも寂しそうであるし、何より今は随分と不穏な世になっている。皆で一緒にいた方が精神面でも安全面でも良いだろう――なんて、そんなのは建前だけど。
 そんなことをつらつらと考えながら手を動かしていた時、ふと湊は違和感を覚えて顔を上げた。
(なんか、あった?)
 なんだか、いつもより人々の歩調が速く、耳に届く声も雑然としている。悲鳴や怒声などが聞こえているわけではないが、どこか忙しない周りに嫌な予感がして、綺麗にしたジャガイモを籠に戻しながらゴチャゴチャと混ざり合う周りの声に耳を澄ませた。
 また火薬?
 ええ、最近多いわね……。
 米蔵も狙われてるらしいけど――。
 なんにせよ物騒だわ。私たちの備蓄にまで手を出されたらたまったもんじゃない。
 今は大丈夫だとはいえ、これからも大丈夫なんて保証はねぇからな。はやく帰るぞ。
(かやく……?)
 不安が膨らめば膨らむほど、人はそれを口に出して少しでも心労を減らしたいと無意識のうちに口を動かす。おかげで何故彼らが足早に動いているのかという理由は理解できたが、なんだか随分物騒な言葉が聞こえてきて湊は無意識に眉間に皺を寄せた。
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