必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 大切な者の悲痛な叫びを、苦痛に耐える様を、決してやり直すことはできない死を、あるいは他者の断末魔の叫びを見ないフリはできない。僅かも心を痛めないなどということもできない。これでよかったのだと胸を張って言うこともまた、きっとできないだろう。それでも、大切な者を守る為に決断し、動かなければならない。
「……弥生さん。幼き頃の情と、上さんへの忠義と、そなたの正義心に、縋ってよろしいか」
 兄である帝のことも、我が子である鶴頼のことも、茂秋が護らんとした衛府も、故郷である華都も、静姫宮は捨てることができない。何がより後悔しない道なのかもわからない。だからこそ、自分もまたできないと言い切った弥生の優しさに静姫宮は縋りたかった。
「私にできることならば」
 静姫宮の弱さも狡さもわかった上で、それでも頷いてくれる弥生に静姫宮は口元に笑みを浮かべるものの、その顔は悲しみと申し訳なさで埋め尽くされていた。それもそうだろう。静姫宮は、それを弥生に願うことがどういうことであるかを知っている。
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