必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「近臣以外で力を持つ者、と? まさか領主や華都の摂家などとは言わぬだろうな? 領主らは近臣以上に衛府に忠誠心など持ってはおらぬし、摂家など改めて言う必要もあるまい」
 彼らはむしろ敵と思うべきだという芳次に、弥生はひとつ頷いた。
「もちろん、彼らではございません。話の通じる者も多くおりますが、衛府の命運を託すには多くの者が心を一つにする必要がありますから、少々博打となりましょう。私が申し上げたのは領主よりも摂家よりも信用でき、何よりも力を持つお方」
 彼らが旗印を掲げるのならば、その旗を狙えば良い。
「帝が常に案じ、幸せを願っておられる方。先代御上様である、静姫宮様です」
 衛府を完膚なきまでに滅ぼそうと思えば、静姫宮の安否は危ぶまれる。摂家や領主、暗殺などを行っている若者たちはそのような事など考えもしないか、あるいは必要な犠牲と判断するかもしれないが、弥生の知る帝は決して妹の不幸を許したりはしないだろう。
 弥生は口に出すどころか決して顔にも出さないが、こうすることで最悪の場合は静姫宮だけでも帝の元へ帰すことができるのではないかという打算もあった。
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