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「ま、お前も馬鹿じゃねぇから近頃の情勢は知ってんだろうし心配すんなって言ったって心配するんだろうけどよ。でも、俺はお前の側から消えたりはしねぇし、大丈夫だからそう考えすぎんなよ」
 なんの確証もない言葉だ。武器を振るって戦う以上、彼が護る立場である以上、不穏な世の中である以上、紫呉に危険は付きまとっている。それでも、由弦にとっては彼が言い切ったことに価値があった。紫呉が側から離れたりしないと言うのならば、それは必ず守られるという子供じみた盲信。――だが、それで良い。
「よし、庭の手入れも終わったことだし、槍の練習でもするか?」
 わざとに声を跳ねさせて言う。本当は、由弦が心配している通り紫呉はひどく疲れていて、今にも眠ってしまいそうなほどだ。それでも今グッスリと眠るよりも、由弦と騒いでいた方が良い。疲れなど吹っ飛ばすように、由弦の漠然とした不安が消え失せるように。今、紫呉がやるべきは由弦の笑顔を引き出すことだ。
「やる! 絶対に紫呉と同じくらい軽々と槍を扱えるようになるんだ」
 紫呉の願い通り、由弦はパッと笑みを浮かべて勢いよく立ち上がる。それを眩しそうに見つめて紫呉も立ち上がると、二人そろって槍を構えた。そんな二人を眺めていたサクラは、やれやれと首を振ってクワリと欠伸をひとつ零した。
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