必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「んぐッ――」
「紫呉こそ甘い物食った方が良いと思うぞ。……なんか、顔色悪いし」
 常は大人びているようで、その実ありあまる元気を持て余している紫呉が、今日はなんだか大人しい。紫呉としては上手く隠していつも通りに振る舞っていたようだが、どうにも由弦の目にはその瞳に常の覇気がないように見えた。
 例えるなら常の紫呉は百の敵に囲まれたとしても迷いなく槍を振るって排除するだろうに、今の紫呉は多くの物事に悩んでその手を鈍らせ、負うはずのない傷に塗れてしまいそうな、そんな危うさがある。
〝武衛や、華都で小さな内乱を起こしては、衛府の役人とかを狙っていたみたいだけど、ここ最近は過激になったのか、近臣たちの命を狙ってるみたい〟
 先日聞いた雪也の声が、由弦の頭から離れない。
 紫呉とて仕事なのだから、由弦に言えないこともあるだろう。何でもかんでも教えてくれなければ嫌だなんて我儘は言えないが、それでも不安になることは抑えられず由弦は瞼を伏せる。そんな由弦の頭を、紫呉は砂糖菓子を咀嚼しながらポンポンと撫でた。
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