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「確かに春風家は考え方が柔軟ではありますが、あの家は代々近臣で、骨の髄まで衛府側です。こんな話を持っていけば、その瞬間から事は衛府に伝わり織戸築と峰藤は叩き潰され、若者たちは志半ばで次々と処刑されるでしょう。そうなった時、この国に蔓延するのは笑顔でも幸せでもなく、地獄のような悲鳴です」
たとえどれほど柔軟な思考を持っていようとも、春風家は衛府側につくことを止めない。この混沌とした世の中で情報はどんな金銀よりも価値がある。それをなぜ春風家にむざむざと渡すような真似をしなければならないのか。
「しかし、春風家は顔が広い。それこそ春風家が味方になれば、同時に彼らがもつ縁がすべてあなたたちの味方となる。春風家に話をすることは、先程あなたが言った力を得ることになる――」
「その縁が問題なのです!」
なんとか説得できないかと言葉を重ねる杜環であったが、それをイライラとした口調で光明が遮った。拗ねた幼子のようにムスリと顔を歪めて、光明は少々乱雑に茶を取って勢いよく呷る。
たとえどれほど柔軟な思考を持っていようとも、春風家は衛府側につくことを止めない。この混沌とした世の中で情報はどんな金銀よりも価値がある。それをなぜ春風家にむざむざと渡すような真似をしなければならないのか。
「しかし、春風家は顔が広い。それこそ春風家が味方になれば、同時に彼らがもつ縁がすべてあなたたちの味方となる。春風家に話をすることは、先程あなたが言った力を得ることになる――」
「その縁が問題なのです!」
なんとか説得できないかと言葉を重ねる杜環であったが、それをイライラとした口調で光明が遮った。拗ねた幼子のようにムスリと顔を歪めて、光明は少々乱雑に茶を取って勢いよく呷る。
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