必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「華都の摂家が領主たちに接触を図りだしたようだね」
 なにやら難しそうな書物を読みながらポツリと零した優に、茶を飲んでいた紫呉が視線を向けた。体面など捨てて転がり込むようにやって来た近臣と弥生が面会しているため、側に居ることのできない二人は何かあった場合すぐに駆け付けることのできる位置にある控えの間にいる。しかし気を抜くことはしないが何もすることが無い時間でもあるので、紫呉は首を傾げつつも身体ごと優に向き直った。
「摂家が領主を取り込もうとすることなんて、いつものことだろ?」
 それは紫呉たちが生まれるよりもうんと前、それこそ衛府が開かれた時からあったことで、何も今が特別なわけではない。最初から華都派の近臣とて数えきれるほどではあるが存在する。だが優はその言葉を肯定することはなかった。
「今までのが軽い接触とするなら、今は陰湿な接触と言うべきかな? どちらもそれぞれ異なった思惑があるのだろうけれど、華都は領主たちが持つ武力が欲しいし、領主たちは帝という絶対的な味方を得ることで目の上のたん瘤であった衛府を潰す正当な理由を持つことができるからね。この後はどうかわからないけど、今のところは利害が一致している。だからかな、今まで以上に強く、本気で手を組もうとしているみたいだ」
 茂秋が将軍であった時からその動きはあったが、今はそれが活発化している。各地で起こっている近臣を狙った惨殺も、その背を押しているのだろう。
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