必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「そんなつもりはなかったんだけど。ま、いっか」
 諫めるように近づいて膝をポンポンするサクラの頭を撫でる湊に、蒼は無言で目を細める。緊急事態であるからとはいえ、湊が自主的に一人で外に出ようとしたことをこんな状況でなければ喜べるはずであるのに、どうにも引っかかりを覚えて仕方がない。
 あちらもこちらも心配事は尽きないというのに、時代は何一つ待ってくれない。
「周、何か欲しい野菜があったら僕がここに来る時、一緒に持ってくるから遠慮なく言ってね~」
 ただでさえ心配で気分を落ち込ませている周や由弦に内心を悟らせるわけにもいかず、蒼は穏やかにそう告げた。周が頷くのを見て、こっそりと胸の内でため息をつく。
 願わくば、何事も起こらないように。例え時代が変わるのだとしても、大切な者達が護られるように。

 そんな蒼の願いとは裏腹に、武衛は混沌を究めるようになる。

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