必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「僕もそう詳しいわけではないけど、今、この国は混乱期に入る寸前なんだと思う。衛府が国の端々にまで威光を放ち、支配できる時代が終わったと言うべきなのかな。国のあちこちで衛府の在り方に疑問を持つ者が増えてきた」
 それは時代の流れとしてはなんら不思議な事ではなく、前例が無いわけでもない。時代が流れれば人も変わる。世襲制であれば尚更に、ずっと衛府が正しい政をするとは限らず、周りも力や知恵を持たない者ばかりではない。善悪が逆転することもあるだろう。そしてそれは時に大波となって国を呑みこむ。今がまさにその時なのでは、と雪也は箸を持つ手に力を込めた。
「茂秋公がご存命の時から、衛府や各領の軍に所属するわけでもない者達が刀を握ってあちこちで戦っていると聞いている。元々武官だった者や、どこかの道場で習った者も少ないわけではないけど、その多くが今まで刀とは無縁だった若者たちらしい。そして彼らは衛府のある武衛や、華都で小さな内乱を起こしては、衛府の役人とかを狙っていたみたいだけど、ここ最近は過激になったのか、近臣たちの命を狙ってるみたい」
 雪也の言葉に、以前まで運び込まれてきた血まみれの若者たちの姿が全員の脳裏に蘇った。浩二郎が執拗なほどに助けるよう説得してきた、刀を持った若者たち。浩二郎含む彼らもまた、衛府に疑問を持ち、戦う若者たちだったのだ。
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