必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 全員で作った夕食を前に、揃って手を合わせてから箸をつける。温かく美味しい食事に一瞬穏やかな気持ちになるが、やはり逸る気持ちがあるのだろう、皆が促すよう雪也に視線を向け、雪也もまた考えを纏めるようにゆっくりと瞬きをした。
「そうだね、何から話した方が良いかな。……とりあえず、今回の件に関してお三方は関係ない。狙われたわけでも、怪我をされたわけでもない。だから今回は、安心して」
「今回〝は〟?」
 由弦が眉間に皺を寄せる。そう、彼の言葉の通り、今回〝は〟、だ。
「うん。本当は、こんなこと言いたくはないけど、でも、今後もそうだとは、断言できない」
 本当は誰よりも雪也こそが、そのような言葉を口にしたくはなかっただろう。それでも告げられたそれに、皆がヒュッと息を呑んだ。
「……とにかく今は断言できないことを悩んでいる場合ではないから、わかっていることを話すね。多分みんな、どこかで勘づいているとは思うけど」
 おそらくは皆、ボンヤリと得体の知れない恐怖を今まで感じていただろう。はっきりとしない、姿もわからない、けれど何か恐ろしいものが迫ってくるような、そんな恐怖。それを雪也がハッキリとさせる時がきた。
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