必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「その刀で国を作ると?」
 多くの犠牲を出し、血に塗れ、その先に求める国を作るというのか。
「無論。犠牲なくして大事を成すことなどできぬ」
 死を恐れないと言えば聞こえは良いかもしれないが、紫呉は僅かに眉間に皺を寄せた。
「お前らがどんな国を願っているのか俺にはわからねぇが、それはどうしても血に塗れなけりゃ成せないものか? 衛府にも領主にも、話のわかる奴はいる。なんなら俺が引き合わせても良い。力じゃなく、言葉で成したらどうだ」
 槍を持ち、戦うことだけが唯一の取柄とまでのたまった男の言葉とは思えず、浩二郎は静かに目を細め、いつでも刀が抜けるよう鯉口に指をかける。
「我々の言葉を衛府の者が聞くと? とんだおめでたい頭だ。衛府とて、力で今の世を築いた。ならば我々の力で滅ぼされるのもまた、定めというもの」
「何が何でも力で成すつもりか?」
 それがまるで全き悪道であるかの物言いに少し苛立ちながら、浩二郎はフン、と鼻で嗤ってみせた。
「綺麗ごとを。あなたとて力を振るい、成す者ではないか」
「否定はしねぇが、それでも他の道もあるのに何が何でも力を振るおうとは思わねぇよ」
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