必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「……なぜ、我々の仕業だと?」
 あの血塗れの籠のように、突き立てられ、あるいは地に転がり落ちた刀には家紋など彫られてはいない。どこかの領主に仕えているわけでもない、ただ志だけで集まった者達は裕福な家の出でもなく、近臣たちのように名刀を持つこともできないのだ。全員がバラバラの郷里であることからも、繋がりなど志以外にはなく、紫呉にも警部所の役人にも集まっている野次馬にも、この惨状だけを見て浩二郎たちの仕業だと断定することはできない。できないはずであるのに、目の前の紫呉はクツリクツリと肩を震わせた。
「おいおい、今更誤魔化す必要もねぇだろ? ぜんぜん隠せてねぇんだからよ、やるだけ滑稽ってもんだぜ?」
 そもそも隠したいと思っているのなら、もう少し顔と空気を取り繕う術を持つべきだ。そんなことを言ってのける紫呉に何かを言い返さねばと思うのに、浩二郎は何も思い浮かばず言葉に詰まる。紫呉は〝戦うことだけが唯一の取柄〟などと言ったが、どうやら浩二郎よりは弁がたつようだ。
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