必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「まさか――」
 ここからでは刀や飛び散った赤が邪魔をして籠の紋を確認することができない。蒼と湊の脳裏に最悪の想像がよぎった。心臓が握りつぶされたかのように痛み、額には脂汗がにじむ。
 ここは、近臣の屋敷が建ち並ぶ場所。ここには、春風家の屋敷がある。春風家は将軍の側近くに仕える忠臣。当然、弥生も――。
「いや違うッ。蒼、あっち」
 最悪を想像する蒼に、湊は肩を揺さぶった。人混みで上手く手を動かせないからと、顎でクイクイと斜め向こうを示せば、その意図を正確にくんで蒼が視線を向ける。そして、そこに立つ見慣れた三人の姿にホッと息をつき、肩から力を抜いた。
「よかった……。でも、ならこれは……」
 いったい誰の籠で、何があったのか。あまりに凄惨な光景に再び顔を顰めた時、ポン、と二人の肩が優しく叩かれた。思わず勢いよく振り向く。そんな二人に肩を叩いた雪也は驚いたように目を見開いた。
「あ、雪ちゃんか~。ごめん、ちょっと色々考え事してたから」
 雪也相手に随分と過剰な反応をしてしまったと眉尻を下げる蒼に、雪也は小さく微笑むと首を横に振った。
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