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湊は首を傾げているが、彼は気づいてほしくないと願っているものを無理矢理暴いたり、根掘り葉掘り聞いてくることも無い。そんな彼に甘えながら、いつも通り夕食を一緒に食べるため手土産として金にはならないが充分に食べることのできる野菜たちを籠の中へ詰め込んでいった。
「んじゃ、親父~、ちょっと雪ちゃんの所行ってくるから~」
相変わらず湊がいる間は奥へ引っ込んで顔を見せない父親に大声で告げてから、蒼は籠を背負い、湊の手を取った。
「ちょっと遅くなっちゃった。周の支度に間に合うかな~?」
庵の三人分だけならばともかく、自分たちと弥生たちが加わればそれなりの人数だ。さすがに周一人に食事の支度を任せるのは申し訳ないと、常はもう少し早く出るのだが、今日は考え事をしていて少し遅くなってしまった。
失敗した、と顔を顰める蒼に、手を引かれていた湊は少し歩調を速め、逆に手を優しく引っ張る。
「少し早歩きしたら、きっといつも通りの時間に着くさ。周のご飯が俺を呼んでいる! 行こう!」
大げさに庵の方を指さした湊に、それはいったい何の真似だと笑いながら蒼が強く地面を蹴った時、遠くで悲鳴のような甲高い声が響き渡った。
「んじゃ、親父~、ちょっと雪ちゃんの所行ってくるから~」
相変わらず湊がいる間は奥へ引っ込んで顔を見せない父親に大声で告げてから、蒼は籠を背負い、湊の手を取った。
「ちょっと遅くなっちゃった。周の支度に間に合うかな~?」
庵の三人分だけならばともかく、自分たちと弥生たちが加わればそれなりの人数だ。さすがに周一人に食事の支度を任せるのは申し訳ないと、常はもう少し早く出るのだが、今日は考え事をしていて少し遅くなってしまった。
失敗した、と顔を顰める蒼に、手を引かれていた湊は少し歩調を速め、逆に手を優しく引っ張る。
「少し早歩きしたら、きっといつも通りの時間に着くさ。周のご飯が俺を呼んでいる! 行こう!」
大げさに庵の方を指さした湊に、それはいったい何の真似だと笑いながら蒼が強く地面を蹴った時、遠くで悲鳴のような甲高い声が響き渡った。
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