必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「お前が頼る先は俺でありたいんだ。それは八つ当たりじゃねぇよ。だから、頼るのも、想うのも、甘えるのも、俺にしとけよ。それがどういう意味か、わかってんだろ?」
 反応を見るに、口づけの意味すらわからぬほど子供ではないらしい。ならば、と紫呉はもう一歩踏み込んだ。それでも由弦は逃げない。指を絡めるように手を繋ごうと、腰に腕を回して抱き寄せようと、ますます顔を赤く染め上げはするものの逃げることはなかった。
 それが答え。
「……ん、わかった……」
 小さく頷いた由弦に、よくできましたと言わんばかりに紫呉は髪を撫で、そのつむじに口づけを落とした。


 帰路につく蒼と湊を雪也が、弥生と優と紫呉を由弦が見送る為に外に出て、周は一人文机に向かった。カサリと冊子を開き、筆を滑らせる。

『どうか笑っていてください。どうか幸せでいてください。それは陳腐な言葉に聞こえるかもしれないけれど、どれだけ言葉を飾ろうと、並べ立てようと、結局あなたに願うのは、そんな言葉で。
 この想いは、いつかあなたに届くでしょうか。いつか、あなたは気づいてくれると願って良いでしょうか。
 あなたが与えてくれたその日から一度もこの冊子を開いていないのは知っているけれど、いつかこれをあなたが見る日があるでしょうか。なら、あなたが自然に知ることが無かったとしても、これを見たその時は、どうか信じてください。
 ここに書かれたすべてに、偽りなどないということを』
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