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「……紫呉が悪いわけじゃないんだ。ただ、こう……紫呉を見た瞬間に、その……、でも、これは八つ当たりなんだ」
真面目だな、と紫呉は思わず胸の内で苦笑した。
いっそ可哀想になるくらい真面目で、紫呉に対して誠実だ。由弦は確かに年齢こそ子供と呼べるそれではないかもしれないが、この庵に来るまでは師匠と呼ばれる者と山に引き籠っており、多くの人と関わることはなかった。そんな彼の心が成長していなくとも仕方がないことで、誰も責めないだろう。雪也が見た目や言動に対して大人になり切れていないことを責めないのと同じように、由弦もまた〝しょうがない〟で済ませられる。だが、由弦はそれに甘えて、彼が言うところの八つ当たりを正当化する気はないようだ。
「溜め込んでギクシャクして、せっかくの時間を楽しめねぇなら喋っちまえよ。お前が最初に〝八つ当たりだ〟って言った時点で、何を言われても傷ついたりしねぇから。幸いなことに、俺はもう大人になっちまってるしよ」
何を言われても傷つかない人間などいないとわかっていて、それでも紫呉は嘘をついた。その程度の嘘でこの居心地の悪い空気が霧散するのならば、たとえその先で傷つこうとも構わない。
真面目だな、と紫呉は思わず胸の内で苦笑した。
いっそ可哀想になるくらい真面目で、紫呉に対して誠実だ。由弦は確かに年齢こそ子供と呼べるそれではないかもしれないが、この庵に来るまでは師匠と呼ばれる者と山に引き籠っており、多くの人と関わることはなかった。そんな彼の心が成長していなくとも仕方がないことで、誰も責めないだろう。雪也が見た目や言動に対して大人になり切れていないことを責めないのと同じように、由弦もまた〝しょうがない〟で済ませられる。だが、由弦はそれに甘えて、彼が言うところの八つ当たりを正当化する気はないようだ。
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何を言われても傷つかない人間などいないとわかっていて、それでも紫呉は嘘をついた。その程度の嘘でこの居心地の悪い空気が霧散するのならば、たとえその先で傷つこうとも構わない。
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