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「雪也にとっての子供であり続けるなら、僕は何も言わない。どれだけ我儘を言おうと、雪也のすべてを受け止めきることができなくとも構わない。抱えきれないと逃げたとしても、誰も責めはしないだろう。でも、子供でありたくないと願うのなら、しっかりと考えてごらん?」
 欲しいばかりでは得ることなどできない。欲しいばかりでは受け止めることもできない。欲しいばかりでは、いつか愛した人をボロボロに傷つけ、離れていってしまう。欲しいばかりでは、幸せなど手に入りはしないのだ。
「これはね、ふふッ、ただの独り言なんだけど」
 思い出すように、慈しむように小さく肩を震わせながら髪に落ちた葉を手に取って、優はクルクルと弄んだ。
「弥生はね、あんな見た目と言動だから冷静沈着だとか、厳しいだとか冷たいだとか、すぐに誤解されちゃってね。でも本当は情に厚くて、切り捨てることができない性格だから、少なくとも数えきれないくらいには失望されて、呆れられてきているんだ。だから、弥生は僕に面倒と思うなら無理に一緒にいる必要なんかないって言ったこともある。おかしいだろう? 確かに優しさを持ちながらも必要なら切り捨てることができる者もいるけど、僕は弥生がそうだと思ったから側にいたわけじゃない。それに、僕はそこまで優しくはないから、一緒にいて丁度良い。弥生に害をなす者は僕が代わりに切って捨ててやるって、それをそのまま言ったら、なんとも言えない顔で固まっちゃって。ふふふ、あの時の弥生は可愛かったなぁ。まるで未知の生物を目の当たりにしたみたいに半目になって、僕の言うことはあんまり信じてないんだなってありありとわかったよ。それから、どれだけ僕が真剣で、有言実行の男かと信じてもらうためにあの手この手。それはそれは大変だったけど、徐々にコロコロと表情を変えて素を見せてくれるようになったと気づいた時の感動は言葉では表せないほどだったよ」
 なんだか砂糖を口の中に突っ込まれたかのような惚気を聞かされたような気もしなくもないが、それでも周は優が何を言いたいのかすらわからないほど愚鈍ではなかった。
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