必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「受け止めると豪語しておいて、中途半端に投げ出すことほど残酷なものはないよ。心を欲しがるというのは、それだけの覚悟がいる。正しいばかりの人間なんて、この世にはいないからね」
 この世に生きる多くの人が誰かを好きになる。その好きには様々なものがあるが、相手に同じように想ってほしいと心を欲しがるというのは同じだろう。子供のように無邪気に、大人のように欲を孕みながら、相手の心を欲しがる。それは一種の本能のようで、理由など知る者は少ないだろう。
 想っているから、想ってほしい。それは自然な欲求だ。けれど、そこには確かに覚悟が必要なのだ。無責任に欲しい欲しいと豪語して良いものではない。
「弥生も雪也も、優しいだろう? 優しくて、理性的だ。でもね、それは完璧な人間であるというわけじゃない。優しいということは、物事を深く考えることと同義だ。ほんの微かなモノさえも敏感に感じ取るほど繊細であることと同義だ。逆に言えば、深く考えず鈍感な者はそれだけ楽に生きることができるかもしれないけれど、知らぬ間に誰かを傷つけて、それすらも知らずに業を深くしていく」
 そして悲しきかな、人は傷つけられたことはずっと覚えており、怒りを絶えず向けるというのに、優しさを与えられても感謝するのはその一瞬で、時が経てば忘れていく者も多い。そしてその優しさに慣れた時、感謝すら抱かずに当たり前と思ってしまうのだ。
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