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手を引いてやるのが親の役目だと優は言ったが、本当は周がそうしてあげたかった。確かに雪也を救ったのは弥生で、周の知らない時間を共にしている。彼らには彼らの、周が知ることのない絆があるのだろう。わかっていて、それでも思うのだ。弥生と自分と、何が違うのだろうかと。
雪也が弥生と離れ庵に住んでから、それなりの時間が経った。一緒にいた月日の長さなら、もう周も弥生とさほど変わらないはずなのに。
「比べたところで無駄だよ。周は弥生ではないし、弥生も君ではない。そして周がなりたいのは、弥生ではないだろう?」
まるで心を見透かしたように言う優を周は見つめる。どういうことだと、無言でそう問い詰めてくる周の視線に、優はクスリと笑った。
「君が成りたいのが雪也にとっての弥生なら、いま君の中にある悋気や嫉妬というものは間違いだ。そんなものを抱く必要はない。確かに父親という存在も嫉妬や悋気を覚えるかもしれないけど、周のそれはまた違うからね。そんな感情を我が子に抱くのは親じゃない」
周は自覚しているのだろうか? その、雪也に向ける決して美しいとは言えない欲に濡れた瞳を。
雪也が弥生と離れ庵に住んでから、それなりの時間が経った。一緒にいた月日の長さなら、もう周も弥生とさほど変わらないはずなのに。
「比べたところで無駄だよ。周は弥生ではないし、弥生も君ではない。そして周がなりたいのは、弥生ではないだろう?」
まるで心を見透かしたように言う優を周は見つめる。どういうことだと、無言でそう問い詰めてくる周の視線に、優はクスリと笑った。
「君が成りたいのが雪也にとっての弥生なら、いま君の中にある悋気や嫉妬というものは間違いだ。そんなものを抱く必要はない。確かに父親という存在も嫉妬や悋気を覚えるかもしれないけど、周のそれはまた違うからね。そんな感情を我が子に抱くのは親じゃない」
周は自覚しているのだろうか? その、雪也に向ける決して美しいとは言えない欲に濡れた瞳を。
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