必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 血こそ繋がっていないが、弥生と雪也は父と子みたいなものだ。それを言えば周は兄と弟ではないのかと半目になっていたが、優からすれば兄というには弥生は雪也を過保護なほどに心配しているし、弟というには雪也はひどく危うげで導いてやらねばと優でさえ思うほどだ。だから、父と子という表現は間違いではない。
「つまり雪也が弥生の子なら、僕にとっても子ということなんだから、嫉妬なんて抱く必要はないんだけどね。そこはほら、独占欲とか色々あるでしょ?」
 何を明け透けに言っているのかと、周は小さくため息をついた。雪也は周を必要以上に子供だと言って、それこそ弥生に負けず劣らず過保護を発揮してもどかしさを抱くが、優は子供相手に何を言っているのかと後で弥生に怒られそうなことを平然と言ってのけた。そんなことで赤面したり狼狽えたりするような周ではないが、返答には困って無言を貫く。
「でもこれで少しは雪也の恐れも消えるだろうから、いつも通りに戻るよ。子供が迷っているのなら、手を引いてやるのが親の役目だからね」
 あの日から雪也の様子が少しおかしいことは周も気づいていた。でも雪也が微笑んで、何でもないフリをするから、無理に暴くことができなくて、気づいていないフリをするしかなかった。その事実が悔しくて、周は唇を噛む。
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