必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「私が探してこよう。急に姿を見せたら、雪也も驚くかもしれんからな」
 それはとても面白そうだと笑う弥生に周は少し戸惑った後、ぎこちなく頷いた。それを横目で見ていた紫呉は周の側に風呂敷を置いて由弦の腕を掴む。
「なら、片づけは俺がやるから夕飯作りは優に任せて良いか? 俺はちょっと由弦と出てくる」
「……え? いや、俺は別に――」
 唐突な紫呉の言葉に由弦はサクラを抱いたままキョトンと目を丸くする。しかし、紫呉は由弦の言葉など聞かないとばかりに、優が頷いた瞬間に由弦の腕を強く引いて、サクラを抱いたままの彼を問答無用で外へ連れ出した。
 何事かと思わず無言で見送ってしまった周たちに、事情を理解している弥生と優は苦笑し、三人の頭を順番に撫でると弥生は扉の方に、優は鍋の前に足を動かした。
「では、少し頼んだぞ」
「うん、いってらっしゃい」
 未だボンヤリとしている三人を放置して、弥生は優の返事を聞くと扉に手をかけた。
(さて、雪也はどこに行ったかな)
 周たちは気づいていないが、弥生は不在の間に何があったのかをすべて知っている。知っているということを、雪也もわかっている。だからこそ確信するのだ。雪也は弥生たちの訪問に気づいていないわけではないと。
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