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 ごめんね。ごめんなさい。そんな言葉を交わして、少しぎこちなくはなったけれどいつも通りに夕食を食べて、蒼と湊を見送ったら川の字で眠った。風の流れる音が異様なほど大きく聞こえる中、雪也はゆっくりと起き上がる。
 灯りを消した庵の中は真っ暗だが、耳を澄ませば風の音に紛れてほんの僅か、二人の寝息が聞こえる。それに安堵して、雪也は音をたてることもせず立ち上がり、薬棚から薬包を取り出すと、庵の外へ向かった。
 風に髪を揺られながら、浩二郎が来るまで毎夜訪れていた泉に向かう。一歩、一歩、庵から離れる度に胸が大きく騒めいて気持ち悪い。荒くなる呼吸を唇を閉ざすことで押し込め、縋るように薬包を握りしめた。

〝二度とこんなことしないでッ!〟

〝俺も怒ってねぇわけじゃないから。こんなこと、二度とすんなよ〟

〝今回の雪ちゃんは全部を間違ったんだから〟

 グルグルと、同じ言葉ばかりが脳内で繰り返される。こんなにも風の音がうるさいというのに、頭に響く声は僅かも消えてくれない。気づけばボロボロと止めどなく溢れて、頬が濡れていた。でも、別に構わない。ここには雪也以外の誰もいない。誰も、こんな姿を見ないのだから。
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