必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 さて、周はどこだろうと視線を巡らせながら考える。見える範囲に姿がないとすれば、裏の庭か、それとも町か。周だけが知る秘密の場所だと厄介だなと踵を返した時、庵の扉からサクラを抱いた湊が出てきた。
「サクラなら、周の居場所を教えてくれるかなーってね」
 ただ心配しているだけ、なんて素直に言えず、わざとらしくサクラに話しかける湊の姿に思わず笑みがこぼれる。地面に降ろされたサクラも半目になって鼻を鳴らしたが、仕方がないとばかりに二人に視線を向け、トテトテと歩き出した。
「もしかして、本当に案内してくれる感じ?」
 自分で言っておきながら湊が目を見開く。サクラは優しいからな~、なんて親バカなことを胸の内で呟きながら、由弦もサクラの背を追いかけた。そしてサクラが目指す先、米などを備蓄している奥の隙間に、挟まるようにして座り込んでいる周の姿があった。泣いているのだろうか、立てた両ひざに顔を埋め、うずくまっている。
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