必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 のらりくらりと躱して真面目に取り合わない雪也にムッとしながら、周は厨に行くと手際よく朝食の用意をする。雪也が何と言おうと今朝はたまご粥だ。由弦の腹に足りなければ別におかずを作ればいい。浩二郎の腹の空き具合など知るものか。
「昨日の白菜が少し余ってるから、それも食べようか」
 袖が邪魔にならないようタスキを掛けた雪也が近づいてくるのを、周は苦い顔をして遮る。そして白いタスキをスルリと抜き取ると問答無用で雪也を座らせた。
「雪也は座ってて。本当は、寝ててほしいけど、それが嫌なら座ってゆっくりしてて。サクラ、雪也を見張ってて」
 いつの間にか起きていたサクラをヒョイと抱き上げて、周は雪也の膝に降ろす。サクラは仕方ないなとばかりに欠伸をひとつ零し、雪也の膝の上で丸まると再びクゥクゥと寝息を零しだした。いかにのらりくらりと躱す雪也であっても、気持ちよさそうに眠っているサクラを抱き上げて起こすことはできない。どうしようかと乾いた笑いを零しながらサクラを見つめる雪也に、これで良いとばかりに周は大きくひとつ頷いて朝食作りに戻った。
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