必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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(きっと骨の髄まで、染み込んでるんだ)
 諦めたようにポツリと胸の内で呟きながら、いつも通り薬の用意をしていく。何も無い、いつもの日常であるように振る舞うのだ。そうしなければ、落とされた一点の黒をさりげなく際立たせることができない。
「……んっ」
 寝ている皆を起こさないよう静かに作業をしていれば、少し後に周が僅かに声を零しながらゆっくりと起き上がる。幾度も瞬きを繰り返しながら目を擦りつつ、キョロキョロと自分の隣に視線を彷徨わせた。
「おはよう、周」
 小さく声をかければ、周はハッとして顔を上げる。薬研の側に座っている雪也の姿を視界に映した瞬間、周は急いで立ち上がり駆けよってきた。
「雪也、眠れなかった?」
 浩二郎が庵に居るようになってから雪也は周よりも早く起きていることが多いが、それでも身体を起こしている最中であったり、遅くとも着替えをしている最中で、今日みたいに身支度を済ませて薬研の側にいるなど珍しい。いつも通りに微笑んで大丈夫だと告げる雪也に、周は静かに近づいてその頬へ触れた。
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