必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「未だに浩二郎は入り浸ってて、庵は何とも言えねぇ雰囲気らしいぞ。だが、蒼がなにやら雪也に対して発破をかけたらしいから、近日中に雪也が浩二郎をどうにか追い出すために動くだろうがな」
 雪也が動くなら、必ず浩二郎は庵を出ることになる。それは手ほどきをした己への過信でもなければ、雪也に対しての過剰な期待でもない。純然たる事実になるだろう。なのに、それを喜んでやれない自分がいて、紫呉はガシガシと乱雑に頭を掻いた。
「あぁぁあぁぁぁッッ、クソッ! あいつ、どうやって浩二郎って男を庵から追い出すつもりだ。嫌な予感しかしねぇんだがッ!」
「同感だな」
「そうだね」
 思わず叫ぶ紫呉に、わずかも悩むことなく弥生と優が同意する。そう、悩むことなど何もない。それくらい、雪也という人間は賢くて、守るものを間違うことなく、そして雪也自身に対してとことん残酷だ。
「考えたところで、流石にわからん。少なくとも庵から離れることは無いだろうからな、不自然にならぬよう近臣たちに帰城を急かそう」
 どうか最悪の方法だけは取らないように。そう願うことしかできない今がもどかしい。多くの思惑が絡み合い、この倖玖城から身動きの取れない現状が早く動くようにと、紫呉は障子の向こうに見える月を睨みつけた。
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