390 / 714
389
しおりを挟む
無償の奉仕を当たり前だと言えるのは、施す側だけだ。施される側も、傍から見ているだけで何の助けもしない者も、それを当たり前と言ってはならない。それをすれば、いずれ何かが壊れる。利用するだけ利用してきた者達が自業自得だと割り切ることは容易いが、壊れるのが助けた側である雪也や周、由弦であったらと思うと目も当てられない。
正しい人が、優しい人が、幸せで生きやすくあるべきだ。
「この庵は弥生様が雪ちゃんたちの為に渡してくれたものでしょ? なら、雪ちゃんたちが心地よくあるために使うべきだと思う」
それに、と蒼は続く言葉を呑みこみ、胸の内で小さくため息をつく。
何が目的かなど、平凡な町民である蒼にはサッパリわからないが、そもそも浩二郎とて体力こそ戻っていないものの、もう充分に動けるほど傷は治っているのだ。ならばもう庵にいる必要はないはず。周や由弦のように雪也の何かを手伝うのであればまだ、とも思うが、彼は部屋の隅でひたすらに何かを考え込んでいるか、志士が運ばれてきた時のみ半ば雪也を脅すように手伝っているだけで、衛府側の怪我人が運ばれてくると何かと理由をつけて雪也を遠ざけようとするし、夜な夜などこかへ出かけてもいるようだ。おそらくは同志たちとの会合なのだろうことは予想できるが、そんなことはこちら側に何ら関りのないことだ。どちらにせよ、浩二郎は雪也の優しさと弱さに付け込んで好き勝手振る舞っているようにしか蒼の目には見えない。
正しい人が、優しい人が、幸せで生きやすくあるべきだ。
「この庵は弥生様が雪ちゃんたちの為に渡してくれたものでしょ? なら、雪ちゃんたちが心地よくあるために使うべきだと思う」
それに、と蒼は続く言葉を呑みこみ、胸の内で小さくため息をつく。
何が目的かなど、平凡な町民である蒼にはサッパリわからないが、そもそも浩二郎とて体力こそ戻っていないものの、もう充分に動けるほど傷は治っているのだ。ならばもう庵にいる必要はないはず。周や由弦のように雪也の何かを手伝うのであればまだ、とも思うが、彼は部屋の隅でひたすらに何かを考え込んでいるか、志士が運ばれてきた時のみ半ば雪也を脅すように手伝っているだけで、衛府側の怪我人が運ばれてくると何かと理由をつけて雪也を遠ざけようとするし、夜な夜などこかへ出かけてもいるようだ。おそらくは同志たちとの会合なのだろうことは予想できるが、そんなことはこちら側に何ら関りのないことだ。どちらにせよ、浩二郎は雪也の優しさと弱さに付け込んで好き勝手振る舞っているようにしか蒼の目には見えない。
1
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
今世では誰かに手を取って貰いたい
朝山みどり
BL
ノエル・レイフォードは魔力がないと言うことで、家族や使用人から蔑まれて暮らしていた。
ある日、妹のプリシラに突き飛ばされて、頭を打ち前世のことを思い出し、魔法を使えるようになった。
ただ、戦争の英雄だった前世とは持っている魔法が違っていた。
そんなある日、喧嘩した国同士で、結婚式をあげるように帝国の王妃が命令をだした。
選ばれたノエルは敵国へ旅立った。そこで待っていた男とその日のうちに婚姻した。思いがけず男は優しかった。
だが、男は翌朝、隣国との国境紛争を解決しようと家を出た。
男がいなくなった途端、ノエルは冷遇された。覚悟していたノエルは耐えられたが、とんでもないことを知らされて逃げ出した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる