必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「儂が死んだ後なら、そなたらが去ったとて、誰も後ろ指を指すまい。衛府にとって、春風家は有益じゃが……使い方を間違えれば、毒にしかならぬ。有事が起こるまでは、下がっておれ。それが……そなたらを、生かすことになる」
 本人を目の前にして〝毒〟だという茂秋に、しかし弥生は何も言わない。その通りであることを十分すぎるほどに知っているからだ。
 父も弥生も、できる事を成してきたつもりだ。その時その時で必要なことをつかみ取るために。だが、大きくなり過ぎたそれらは、もはや手放そうと思っても手放すことはできない。もしかしたら、いつかはそれらが弥生達を滅ぼすモノになるかもしれない。だが、あるいは救う事にもなるかもしれなくて。
 未来が見えぬ以上、残すも悪手、捨てるも悪手だ。ならば、茂秋の言う通り、今は下がるべきなのだろう。茂秋は有事と言ったが、今もまた有事であることには変わりない。それでも、今はまだ駄目なのだ。まだ、毒にしかならない。もっと、もっと緊迫した時にこそ春風家は真価を発揮するだろう。もっとも、その時が来なければいいと弥生は切に願うが。
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