必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 日に日に何度も胸の痛みを訴え、次に足が異常なほどに腫れた。少し動くだけで呼吸が乱れ、額に脂汗がびっしりと浮かび、次第に立っていられず崩れるように座り込むことも一度や二度ではない。
 ――富患い。将軍家や近臣、豪商など裕福な者ばかりが罹ることからそう名付けられた病が脳裏をかすめた。だが、本当に富患いだったとして、何ができるというのだろう。金銭に余裕のある者という条件はあるものの、これまでに多くの者がこの病に罹り、死を迎えている。だが未だに原因すらわからず、よって薬も存在しない。せいぜいが痛み止めを飲むことくらいで、根本的な解決にはならない。
「衛府のことはこれから考えよう。だが、慌ただしいからと雪也の方を放っておくのも心配だ。優、紫呉に言って子飼いを庵の方へ向かわせろ。状況を察するに、接触はしない方が良いだろう。危険が無いか、外側から探れ」
 雪也としては弥生のことを心配して連絡をしてきたのだろうが、庵の中に過剰な尊皇思想を持つ者がいる方が弥生にとっては心配だ。どうせ庵を提供する時点で隠しきることなどできないのだからと人目を忍ぶこともしなかったが、その男に雪也達が弥生の――近臣の関係者だと知られるのは悪手だ。
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