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 男の言葉を聞き終えて、ほんの少し雪也が目を細める。男の言葉に偽りや策は無いと判断したのだろう、纏っていた恐ろしい冷気を霧散させて、彼は屈みこむと男に手を伸ばし、その身体を引き上げた。
「わかりました。とりあえず傷が開きましたから手当てして包帯を新しいものに替えましょう」
 先ほどとは違う、優しい声音に知らず力が抜ける。布団に座ると雪也は赤く染まった包帯を手早く解き始めた。慎重に解かれる包帯を痛みに耐えながら眺めていれば、子供が水の入った桶を持ってくる。
「ありがとう、周。少しお願いして良い? 重湯に近いお粥を作ってほしいんだけど」
 良いかな? と申し訳なさそうに言う雪也に、周と呼ばれた子供はコクンと頷いて離れる。熱が出ているのだろう、何故か意味もなく周の背中をボンヤリと眺めていれば、いつの間にか止血され、綺麗な包帯を巻かれていた。
「お粥を作ってくれていますから、とりあえず薬飲んでくださいね。効いてくるころくらいにお粥もできるでしょう」
 本来であれば知らぬ者の差し出した薬など飲むべきではない。だが熱と痛みでボンヤリとしていた男は抵抗することも無く薬の溶かされた水を飲み込んだ。
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