必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「……それで?」
 すべてを話せと苦しみに揺れる瞳で睨みつけた男に構わず、雪也は枕元に座る。チャプンと、小さく水音がした。
「何があったのかは知りません。ただ傷を負ってフラフラと歩いていたあなたが、町にあるお店の前で突然倒れたのだと聞いています。それで、その店の主人があなたをここへ。私は医者ではないので出来ることは限られていましたが、医者は頼れないだろうと判断してここで治療しました」
 柔らかな声音で、情報とも言えぬ情報を紡ぎながら、雪也は冷たく濡らされた手拭いを男の額に乗せる。随分と身体は熱を持っていたのだろう、その冷たさにホッと息をつきながら男は用心深く雪也の様子を観察した。その視線に雪也も気づいていたが、知らないフリをする。
「診たところ、傷は刀傷のみ。打撲痕はありませんでした。発熱しているのは身体が傷を治そうとしているからで、毒を盛られたわけではないようですから、そこは安心していただいて良いかと思います。以上が、私の知っている全てです」
 それ以上は知らないのだから、例え問い詰められようと答えようがない。そんな雪也に、男は見極めようとするかのように目を細めた。
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